©2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS
『デリシュ!』が描く、ためになるフランス料理の歴史
フランス外務省のシェフが料理をコーディネイト
劇中で振る舞われる料理のアドバイザーを務めたのは、パリのオルセー河岸にあるフランス外務省の厨房を率いるシェフのティエリー・シャリエと、同じくシェフで写真家でもあるジャン・シャルル・カルマンだ。シャリエはオルセーの厨房に部下を従え君臨し、省内で働くスタッフのために毎朝6時に起床し、最高のフランス料理を提供している人物である。同時に、シャリエは自らを”美食外交の大使”と呼び、たとえば、2015年にパリで開催された”COP21”では、世界157カ国から集まった首脳のために公式昼食会をコーディネートしている。
『デリシュ!』©2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS
だが、シャリエはシェフとしての名声には興味がないようだ。それは、本人の言葉にも現れている。「私たちはあくまで影のコックなのです。星取りにも賞にも無縁ですし、話題になることはほとんどない。一方、私の厨房はフランス料理のノウハウと、フランスの職人や生産者の仕事を象徴しているのです」
革命前夜に仕えていた貴族と袂を分かち、庶民のための料理に全身全霊を込めた料理人マンスロンの姿と、シャリエの料理人としてのスタンスが重なる時、フランス及びフランス料理が尊重する民主主義の歴史の重みを感じずにはいられない。