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『デリシュ!』が描く、ためになるフランス料理の歴史

©2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS

『デリシュ!』が描く、ためになるフランス料理の歴史

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 依然として終息しそうもないパンデミックの中で、映画館に出かけることとレストランで食事をすること、以上の2点を同時に満たしてくれる”グルメ映画”が公開された。作品のタイトル『デリシュ!(原題:Délicieux)』は、劇中に登場するジャガイモとトリュフを使ったアミューズの名前であり、物語の舞台になるレストランの名前でもある。


 フランス革命前夜の1789年、主人公の料理人マンスロンは、彼が仕えるシャンフォール公爵のテーブルに”デリシュ”を出してしまったばっかりに、苦難の日々を送ることになる。なぜなら、当時の貴族社会では豚の餌と考えられていたジャガイモを、美食家が集結した席に出すなんて暴挙以外の何物でもなかったからだ。たとえマンスロンがその独創的な料理で公爵に認められた存在であったとしても。


『デリシュ!』予告


Index


庶民に開かれたレストランのパイオニア



 公爵と招待客が囲む広いテーブルに、マンスロン渾身の新作料理”デリシュ”が出されると、貴族たちは『豚の餌を貴族に供するとは何事か!』と怒りだし、やがて周囲は笑いに包まれる。屈辱を味わった公爵はマンスロンに公開謝罪を要求するが、マンスロンは断固拒否。料理することの自由を主張し、結果、解雇を言い渡された彼は、息子のベンジャミンと共に実家に戻ることになる。そこでマンスロンは、父親が亡くなったこと、地域で暮らす人々が度重なる食糧難で飢えていることを、友人のジャコブから知らされる。やがてマンスロンは、故郷に開店したレストランの厨房で、再びシェフとして蘇ることになる。



『デリシュ!』©2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS


 マンスロンのオーベルジュは、何台かのテーブルが食堂のあちこちに間隔を置いてセッティングされ、誰でも自由に出入りすることができる設えだ。そして、客たちは階級に関係なく、個別のテーブルに着いてコース料理を堪能することができる。まさに、フランス革命と共に訪れる食の平等、食の革命である。今では当たり前のこのスタイルが、貴族と庶民が同じ場所で食事を楽しむことなどタブーだった時代に如何にセンセーショナルだったかを伝えるのが、本作の見どころだ。フランス料理は特権階級だけのものではなく、民衆の空腹を満たすために始まったことを伝える映画の目論みは、香り立つジャガイモとトリュフの風味のようにじんわりと心に染み渡ってくるのだ。


 これが長編7作目で初の時代劇になる監督のエリック・ベナールも、「フランスのアイデンティティを形作るものに焦点を当てたいと思っていた時、美食という、座って食事をし、陽気な瞬間を共有すると同時に、啓蒙の時代と革命の要素を全て兼ね備えているものがそこにありました」と、製作の動機を語っている。



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