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『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』にみる「真実」と「虚構」で揺らぐモキュメンタリーの手法とは?

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』にみる「真実」と「虚構」で揺らぐモキュメンタリーの手法とは?


1980年代に盛んになったモキュメンタリー



 その原点をたどると、映画ではないが、1938年、オーソン・ウェルズがラジオ番組でフィクションの「宇宙戦争」を臨時ニュース風に伝えたことで、本当に宇宙人が地球に襲来したと勘違いした多数の人が、パニックを起こすという有名な出来事に行き当たる。虚構を真実のように伝えるスタイルの成功例だ。


 しかしモキュメンタリーの作品がブームになるのは、1980年代まで待たなくてはならない。1983年のイタリア映画『食人族』は、アマゾン川で探検隊が消息を絶ち、発見されたフィルムに残っていた映像は……という、まさにモキュメンタリーの見本のような設定で、日本でも大きな話題を呼んだ。同年のウディ・アレン監督の『 カメレオンマン』も、不思議な能力をもつ主人公をドキュメンタリー風に描いたが、こちらはウディ・アレンが演じていたことで、観客も最初から「偽物」として楽しんだ。モキュメンタリーの方向性を決定づけたとされる『 スパイナル・タップ』も1984年の作品。ロックバンドの破天荒な日常を追った作品で、何も知らない人が観たら、完璧にドキュメンタリーだと信じ込む作りになっていることが画期的だった。日本では劇場未公開のままだったこの作品は、2018年、待望の日本公開が実現する。


 『スパイナル・タップ』に脚本と出演で参加したクリストファー・ゲストは、その後、監督としてモキュメンタリーを追求し、2000年に『 ドッグ・ショウ!』、2003年に『 みんなのうた』を完成させる。モキュメンタリーを得意とする才能といえば、『 ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』などのサシャ・バロン・コーエンで、実際は綿密に準備された演出を、あたかもその場で「突撃」で撮ったかのように見せ、フィクションと現実の境界を突き破ろうとした。


 さらに『 ブレアウィッチ・プロジェクト』や『 パラノーマル・アクティビティ』といった作品は「衝撃映像」という点から、ホラーがモキュメンタリーにふさわしいジャンルであることを証明してきた。このあたりは『食人族』の伝統を受け継いでいる。




 『アイ,トーニャ』はモキュメンタリーの作品ではなく、一部にその手法を感じさせるだけである。しかし、トーニャ・ハーディングとその周辺の人物に、どこまで真実を語っているかわからない胡散くささが漂っているのは周知の事実であり、この映画を観た人からも「悪女だと思ったトーニャの真実がわかった」や、「結局、犯罪を美談にしている」など、反応もさまざま。つまりどこまでが真実で、どこまでが虚構なのか定かではなく、そうした「現実」こそが、まさにモキュメンタリーの立ち位置にそっくりなのである。



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作品情報を見る


『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

5月4日(金・祝)より

TOHOシネマズ シャンテ他、全国ロードショー!

Copyright © 2017 AI Film Entertainment LLC.


※2018年5月記事掲載時の情報です。

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