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『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』2人の少年が作った「リメイク版レイダース!」から見える「レイダース」の本質とは
2018.05.11
スピルバーグに通ずる映画製作の動機
一体2人の少年はなぜ、そこまでして『レイダース』を再現することに憑りつかれたのか。彼らの母親は、息子たちを映画製作に突き動かした原因は自分の離婚にあるのではないかと語る。現実からの逃避、代償行為としての『レイダース』の世界・・・。
それは少年期のスピルバーグの姿とも重なる。スピルバーグは12歳の頃に親から8ミリカメラを与えられ映画を撮り始めるが、ちょうど同じ時期に両親が不仲になり始めた。結局スピルバーグが16歳の時に両親は離婚するのだが、彼はその間も憑りつかれたように自主映画を作り続けた。それは戦争映画、時に西部劇であったが、母親はスピルバーグ少年から映画への協力を頼まれると、兵士の役でも何でも引き受け、映画に出演したという。
スピルバーグは少年期の体験やイメージを作品の中で再現することが多いことでも知らている。特に「父親の不在」というモチーフは作品に度々現れる。それは『 未知との遭遇』や『 E.T.』、『 キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』、さらには『 インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』で繰り返された。そんなスピルバーグの映画『レイダース』に親の不在への恐怖を抱える2人の少年が強く惹かれたのは偶然ではない・・・そう言ったら言い過ぎだろうか。
一つだけはっきりと言えるのは、スピルバーグと彼らは映画にかける情熱という意味において何ら違いはないということだ。スピルバーグも2人の少年と同じように自主映画にとりつかれ、やがてプロとなった。そして自らが子供の頃に映画館で夢中になった「連続活劇」を復活させるべく『レイダース』を作った。その動機自体は、2人の少年となんら変わりはないのだ。そういった意味で『レイダース』はスピルバーグの映画人生の途上で作られた2,000万ドルの壮大な自主映画とも言えるだろう。
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』TM & (C) 1981-2016 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. Used Under Authorization.
スピルバーグが敬愛する巨匠デイヴィッド・リーンは彼の最初期の作品『 激突!』を鑑賞し、こう評したという。
「(スピルバーグは)かつての映画の姿そのままであり、ひたすら映画製作を愛している。彼は十代のころの自分自身を楽しませているのだ。それの何が悪いというのか?」
『 レイダース!』の映像を見ていると、スピルバーグの『レイダース』がいかに優れた映画かがわかる。そこは十代の少年少女を夢中にさせるサムシングの宝庫なのだ。
事実スピルバーグもこう語っている。
「自分の作品だと意識せずに見ることができるものもある。『レイダース』がそうだ。子供と一緒に楽しめる。監督したことや制作の様子を忘れて観客として楽しめる。それが一番うれしい。」
ドキュメンタリー映画『レイダース!』はスピルバーグファンならば見て絶対に損はない作品だ。なぜならあなたが初めて『レイダース』を見た時の感動を必ず思い出させてくれるのだから。その感動の根底にあるものこそ、スピルバーグが少年の頃から持ち続けた自分自身を楽しませる自主制作魂なのだ。 ※『レイダース!』はNetflixで視聴可能
参考資料:
「 はじめて書かれたスピルバーグの秘密」フランク・サネッロ 著/中俣真知子 訳
『 インディ・ジョーンズ コンプリート・アドベンチャーズ』Blu-ray 特典映像より
文:稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。
『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
Blu-ray:1,886円+税 DVD:1,429円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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