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『ザ・メニュー』人々の虚栄心や自尊心を丸裸にする、血生臭い風刺劇

©2022 20th Century Studios. All rights reserved.

『ザ・メニュー』人々の虚栄心や自尊心を丸裸にする、血生臭い風刺劇

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アダム・マッケイ味の強烈なスパイス料理



 あらすじは、ざっくりとこんな感じ。太平洋岸の孤島に佇む、高級フレンチ・レストラン「ホーソン」。ここには、1人1,250ドルというバカ高い価格設定ながら、“伝説のカリスマ・シェフ”スローヴィク(レイフ・ファインズ)の料理を味わおうと、世界中からひっきりなしに客がやって来る。マーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)とタイラー(ニコラス・ホルト)も、この予約の取れないレストランにやってきたカップル。出て来る一皿一皿に感動を抑えきれないタイラーとは対照的に、マーゴはどこか不安なものを感じていた。やがて事態は、思いもよらない方向へと舵を切っていく…。


 本作のプロデュースを手掛けているのは、アダム・マッケイ。『俺たちニュースキャスター』(04)、『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』(08)、『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(10)など、「俺たち」シリーズ(勝手に邦題で「俺たち」シリーズにさせられているだけなんだけど)で知られるフィルムメーカーである。


 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15)ではサブプライム住宅ローン危機を通じて拝金主義の愚かさを、『ドント・ルック・アップ』(21)では地球滅亡危機を通じて痛烈な社会批判をしてみせた彼は、ブラックな毒っ気をたっぷりと含んだ風刺劇の第一人者。エグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねている近作のドラマシリーズ「メディア王 〜華麗なる一族〜」でも、世界的メディア企業を経営する富豪一家を、誰一人感情移入できないサイテー野郎にすることで、特権階級を痛烈に皮肉ってみせた。



『ザ・メニュー』©2022 20th Century Studios. All rights reserved.


 元々『ザ・メニュー』の監督は、『アバウト・シュミット』(02)や『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(13)で知られるアレクサンダー・ペインが務める予定だったという。だが最終的にメガホンをとることになったのは、1951年生まれのベテラン演出家マーク・マイロッド。正直知名度は高くはないが、前述の「メディア王 〜華麗なる一族〜」でエピソード監督を務めるなど、アダム・マッケイとは知己の間柄だった。


 「私が最初に監督を始めたとき、演劇的なキャリアを望んでいた。でも、初期の映画は正直言ってあまり良くなかったから、成長するのに苦労したよ」(※)


 とマイロッド本人が語っている通り、映画におけるキャリアは決して華々しいものではない。「シェイムレス 俺たちに恥はない」や「ゲーム・オブ・スローンズ」など、TVドラマで着実にキャリアを積み、その堅実な仕事ぶりが評価されて今回の起用となった。いずれにせよ、本作が濃厚なアダム・マッケイ味がする強烈なスパイス料理であることは間違いない。





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