『ノマドランド』『フレンチ・ディスパッチ』のサーチライト・ピクチャーズが贈る最新作、映画『ザ・メニュー』の試写会&トークショー「WELCOME TO “THE MENU” NIGHT」が、11月9日に開催されました!本記事では当日の様子をトークショー中心にレポートします。
ゲストはTVCM、広告を中心に、『南極料理人』『川っぺりムコリッタ』『深夜食堂』など数々の映画やドラマでも活動されているフードスタイリストの飯島奈美さん。MCは奥浜レイラさんが務め、映画『ザ・メニュー』の感想について、飯島さんならではの視点で話をうかがいました。
『ザ・メニュー』11月18日(金)劇場公開
太平洋岸の孤島を訪れたカップル、マーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)とタイラー(ニコラス・ホルト)。お目当ては、なかなか予約の取れない有名シェフ・スローヴィク(レイフ・ファインズ)が振る舞う、極上のメニューの数々。 「ちょっと感動しちゃって」と、目にも舌にも麗しい、料理の数々に涙するカップルの男性に対し、女性が感じたふとした違和感をきっかけにレストランは徐々に不穏な雰囲気に。 なんと、一つ一つのメニューには想定外の“サプライズ”が添えられていた… 。果たして、レストランには、そして極上のコースメニューにはどんな秘密が隠されているのか?そしてミステリアスな超有名シェフの正体とは…?
Index
映画におけるフードスタイリストの役割
奥浜:本作『ザ・メニュー』の主役はなんと言っても料理。飯島さんが関わっている作品では、料理が人と人を繋げて幸せになるものが多いと思いますが、『ザ・メニュー』を見られた感想はいかがでしたか。
飯島:怖かったですね。シェフの行為は極端ですが、料理を作る者としては気持ちはわかる部分もありました。全身全霊をかけて素材を選び料理を作る。料理を作った人や食材を育てた人の存在を忘れず、感謝しないといけませんね。
映画を観た当初は呆然としましたが、後からじわじわと感じるようになったんです。ご飯を食べに行くと以前にも増して「本当に美味しかったです」としっかり伝えるようにしたり、料理が来たら(温かいうちに)他のお客さんにも早く食べて欲しい!と思ったり。この作品を見た皆さんもそうなってしまうかもしれませんが、作っている方や環境に対しては良いことだと思います。また、しばらくは料理が来た時の写真撮影はやめましょうかね(笑)。
奥浜:料理を純粋に楽しんで、おいしく食べる事が大事ですね。作品の中でもチーズバーガーを食べるシーンが印象的でした。今日の試写会に来られた方は、この後チーズバーガーを食べに行く方もいそうですよね。
飯島:チーズバーガーが、一番美味しそうでしたよね。
奥浜:この作品には多くの料理が登場しましたが、撮影現場で多くの品数を提供したり、おいしく食べてもらうのは大変そうですね。
飯島:『ザ・メニュー』では、多分10人以上料理に関わる人がいるんじゃないでしょうか。フードスタイリストだけではなく、レストランのシェフと一緒に組んでメニューを考えていそうですね。例えば撮影現場では、セリフでNGが出ると料理は最初から作り直す必要がある。食材や食器は人数の2〜3倍必要になってきます。
『ザ・メニュー』©2022 20th Century Studios. All rights reserved.
奥浜:それは大変ですね。本作ではピンセットで盛り付けをするような料理もありましたね。
飯島:シェフは結構ピンセットを使うことがありますね、日本にはお箸があるのであまり馴染みが無いかもしれませんが。友人の2つ星のシェフは普段お肉を焼く時には、お肉を傷つけないようにスプーンで裏返すそうです。
海外は作品内の料理に対する扱いも違っていて、アメリカでCMの撮影をした際には、作った料理を演者(タレント)に運んだり渡してくれるスタッフがいて、分業が進んでいました。日本では、料理を作って演者さんにお箸も渡し料理をもってもらうところまで、ほぼ全て我々が担当しています。
奥浜:『南極料理人』をはじめとして、俳優さんが料理をするシーンもありますが、そういったときはどうされているのですか。
飯島:料理をするシーンが多い方は、私の事務所に来ていただいて練習をしてもらいます。包丁などの調理器具も持って帰って、家でも練習してもらっています。餃子を包むシーンなど、その場でも出来そうなことは現場で教えたりしますね。
奥浜:役柄上、器用に出来ないといけない方もいますよね。
飯島:『南極料理人』の堺雅人さんはじめ、俳優さんは器用な方が多いのですが、どうしても苦手という方はいらっしゃいますね。そういうときは、手元のアップはやめた方がいいかもと監督にお伝えしています(笑)。
奥浜:これまで大変だった現場はありますか。
飯島:『南極料理人』も人数が多かったのですが『海街diary』は特に多かったですね。実際の食堂でロケ撮影をしていたのですが、写り込んでしまうので食堂の厨房は使えないんです。それで近くの公民館や別の店のキッチンで料理をしていました。例えば、アジフライを揚げるとそれを公民館から食堂まで運ばなきゃいけない。手が空いているスタッフがいたら運んでくださるのですが、基本は自分たちで揚げて運ぶ。そうなると人手が6〜7人くらい必要になるんです。
奥浜:ロケ現場の状況で必要な人数が変わるんですね。
飯島:そうですね、本当はセットでの撮影が体力的に楽でタイミングも計りやすいので、一番いいです。
奥浜:『ザ・メニュー』は裏に料理する場所がありそうですか。
飯島:そうだと思いますね。料理が大事な作品ですし、料理を作りやすい状況で撮影していると思います。