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『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』演技未経験に子役から名優まで、常識破りのキャスティングがもたらす個性のハーモニー

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』演技未経験に子役から名優まで、常識破りのキャスティングがもたらす個性のハーモニー


インスタグラマーから女優へ。奇跡の大転身を遂げた逸材



 子役のキャスティングが天使に魅入られたものだったとするなら、本作でデビューを飾った母親役の逸材、ブリア・ヴィネイトのキャスティングに関しては、まさに映画の神様が微笑んだとしか思えない節がある。


 ベイカー監督は当初、20歳から24歳くらいの若手女優やポップスターまでも視野に入れて、最適の人材を何か月も探し続けてきたという。だがこういった一般的な方法で逸材を見つけ出すのには限界がある。そこで、ハリウッドの手法とは一線を画したベイカー流のインディペンデントなキャスティング術が炸裂することとなる。


 彼は前作『タンジェリン』でもSNSを通じて演技未経験の多くのユニークな人材を採用していた。そこで今一度、未発見の逸材が見つかることを祈りつつ、インスタグラムを物色する中で、ついにブリアの存在にまでたどり着いたのだ。


 彼女は女優ではない。自身が立ち上げた「Chronical Designs」というファッションブランドでビキニやキャップ、ソックス、Tシャツなどを製作・販売するインスタグラマーだった。そこでベイカーが最初に心奪われたという動画は、彼女が裏庭でピンクのフェザーボアと黄色い羽根の飾りを頭につけ、くるくると回転しながら踊るというもの( その動画は今でも彼女のインスタに残っている)。


 儚さと可憐さと、なんとも言えないリアリティを伴った存在感。「これこそ僕らが探していた母親役の“ヘイリー”だ!」と直感したベイカー監督は、すぐに彼女とコンタクトを取ろうと試みるも、当のブリアは監督のことを全く知らず、ちょっとした不審人物扱いで放置されていたそう。でもひとたびそれが正真正銘の映画への誘いだとわかると、すぐさまベイカーの過去作をすべて鑑賞し、彼女はこのチャンスを逃すまいと、すべてを置きっぱなしにしてオーディションを受けに、ニューヨークからマイアミへと飛んだ。この決断力と行動力の結果、すべての惑星が直結したかのような運命の流転によって、彼女の人生は一変したのである。




 カメラの前に立つまでの準備過程には、ベイカー監督のパートナーでもあるサマンサ・クアンによる数週間に及ぶ演技指導が行われた。だがそれは演技のノウハウを付け焼き刃で叩き込むというよりは、ヘイリーの内面を深く理解し、その感情の変化をナチュラルに自分のものとして培っていくというもの。さらにモーテルで暮らす人々からも話を聞きその体験を吸収していった。その結果、彼女は自らの個性を何ら崩さないまま、ヘイリーという人間を体現することに成功した。半分は演じていて、もう半分は自分自身。スクリーンから放出される何者にも縛られない自由闊達な雰囲気は、ブリアが生まれ持って育んできたものに他ならない。こうやって唯一無二のオーラを持ったキャラクターが出来上がったのだ。



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