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  4. 『淵に立つ』一家に入り込む他人によって露呈する家族の素顔 ※注!ネタバレ含みます。
『淵に立つ』一家に入り込む他人によって露呈する家族の素顔 ※注!ネタバレ含みます。

『淵に立つ』一家に入り込む他人によって露呈する家族の素顔 ※注!ネタバレ含みます。


深淵を覗いた者が見たもの



 ここから一気に8年の歳月が過ぎる。重い障碍を背負うことになった娘の介助につきっきりとなる章江の表情だけで、8年の時間を納得させてしまう。利雄は興信所に依頼して八坂の行方を追い続けるが朗報が舞い込む気配はない。工場では新たなに雇った孝司(太賀)が働き始め、他人への警戒心が緩むことのない章江すらも、この青年の純朴な好意には気を許し始める。だが、孝司は自分が八坂の息子であることを告げる。




 フリードリヒ・ニーチェの「おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返す」よろしく、本作は鏡面的な2つの世界を覗き見ることができる。8年前と8年後の世界では、八坂親子が同じように、この一家の前に現れていとも簡単に家庭内に入り込んで信用を得てしまう。こうした反復がピークに達するのは、8年前は幸福な時間を象徴した、河原で寝転がる一家に八坂も加わった俯瞰のショットを、8年後に八坂の息子へと代替わりして繰り返される終盤だろう。だが、それは幸福な瞬間とは程遠い。同じように河原に寝転がるが、そこは深淵が見返した荒涼たる世界が広がっている。「(娘がああなったのは)俺への罰じゃないかと思った」「8年前、俺達はやっと夫婦になったんだ」と、軽薄に口にする利雄に、向けられた試練は重く、観客は映画が終わった後も、いつまでもその深淵付近を漂うような気分になる。



文: モルモット吉田

1978年生。映画評論家。別名義に吉田伊知郎。『映画秘宝』『キネマ旬報』『映画芸術』『シナリオ』等に執筆。著書に『映画評論・入門!』(洋泉社)、共著に『映画監督、北野武。』(フィルムアート社)ほか



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作品情報を見る



『淵に立つ』

監督・脚本:深田晃司

Blu-ray豪華版 5,800円+税 

Blu-ray 4,800円+税

DVD  3,800円+税

発売元:バップ

Ⓒ2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS


※2018年5月19日(土)~5月25日(金)キネカ大森にて期間限定公開


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