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『青春弑恋』若者たちと都市の孤独、そしてエドワード・ヤンの痕跡

©2021 CHANGHE FILMS LTD.

『青春弑恋』若者たちと都市の孤独、そしてエドワード・ヤンの痕跡

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『青春弑恋』あらすじ

舞台活動に打ち込む女優のユーファン(ムーン・リー)は、日頃はカフェの店員として働く身。議員の父親と再婚相手、同居人のミンリャン(リン・ボーホン)と4人で暮らしているが、家族間のコミュニケーションは少なく、ミンリャンとはまったく言葉を交わしていない。父の結婚式に出席したユーファンは、古い知り合いの料理人・シャオジャン(リン・ジェーシー)と再会する。長い航海を終えて帰国したばかりの彼は、料理店で働きながら、いずれ自分の店を持ちたいと考えていた。以前から好意を寄せていたシャオジャンのアプローチもあり、やがて二人は結ばれる。しかし二人が旅行に出かける日、道中の台北駅で、ユーファンは刀を持った男に突如襲われる。彼女を守ろうとしたシャオジャンは肩を斬られて負傷し、病院に搬送された。犯人は逃げ出したが、ユーファンは男の顔を見ており、その正体が同居人のミンリャンであることを証言する。すぐに警察に出頭したミンリャンは、なぜか犯行の動機について「昔の恋人だ」と語りはじめ……。



 1980年代~90年代、台湾の若手監督たちが台湾という土地やその歴史、社会を描いた、商業主義ではない新しい映画を作ろうと試みた。それまでの台湾映画とは異なる作品を多数生み出した一連のムーブメントは「台湾ニューシネマ」と呼ばれ、現在もなお世界中に多くのファンを持つ。ホウ・シャオシェン監督『悲情城市』(89)や、エドワード・ヤン監督『牯嶺街少年殺人事件』(91)は、その中でもとりわけ有名な作品だ。


 1971年生まれの俊英、ホー・ウィディン監督による『青春弑恋』(21)は、この台湾ニューシネマに大いなるオマージュを捧げ、現代にアップデートしようとするかのような野心作だ。言わずもがな、そこには「今」の社会が抱える諸問題が立ち上がっている。


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台北、6人の若者たち



 舞台活動に打ち込む女優のユーファン(ムーン・リー)は、日頃はカフェの店員として働く身。議員の父親と再婚相手、同居人のミンリャン(リン・ボーホン)と4人で暮らしているが、家族間のコミュニケーションは少なく、ミンリャンとはまったく言葉を交わしていない。


 父の結婚式に出席したユーファンは、古い知り合いの料理人・シャオジャン(リン・ジェーシー)と再会する。長い航海を終えて帰国したばかりの彼は、料理店で働きながら、いずれ自分の店を持ちたいと考えていた。以前から好意を寄せていたシャオジャンのアプローチもあり、やがて二人は結ばれる。



『青春弑恋』©2021 CHANGHE FILMS LTD.


 しかし二人が旅行に出かける日、道中の台北駅で、ユーファンは刀を持った男に突如襲われる。彼女を守ろうとしたシャオジャンは肩を斬られて負傷し、病院に搬送された。犯人は逃げ出したが、ユーファンは男の顔を見ており、その正体が同居人のミンリャンであることを証言する。すぐに警察に出頭したミンリャンは、なぜか犯行の動機について「昔の恋人だ」と語りはじめ……。


 ここで紹介したのは、『青春弑恋』という映画のほんの始まりにすぎない。ほかに登場するのは、ユーファンの劇団仲間であり、アダルトサイトのライブ配信で大勢のフォロワーを集めた過去を持つモニカ(アニー・チェン)、ミンリャンに恋するコスプレイヤーの女子高生・キキ(ヤオ・アイニン)、ひょんなことからミンリャンと出会うマッサージ屋の女性・シャオ(ディン・ニン)だ。物語は時系列を行き来しながら、6人の人間関係を、そして事件の真相をゆるやかに描き出していく。




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