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『恋する惑星』恋愛映画の傑作が切り取る、90年代前半の香港に流れた空気

© 1994, 2008 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.

『恋する惑星』恋愛映画の傑作が切り取る、90年代前半の香港に流れた空気

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『恋する惑星』あらすじ

恋人から別れを告げられ、別れを確信した刑事・モウ(金城武)は、バーを訪れ、「今度入ってきた女を好きになろう」と決め、金髪の女性ドラッグ・ディーラー(ブリジット・リン)と出会う。そして、モウと同じく、警官663号も恋人を失った身。恋人は、警官663号の自宅に帰らなくなり、惣菜屋に手紙と自宅の合鍵を預けた。総菜屋の新人店員のフェイ(フェイ・ウォン)はそれらを渡そうとするが、警官663号は受け取らない。その後、フェイは鍵を自分のものにすると、警官663号の自宅に忍び込む。部屋を掃除し、模様替えをし、水槽の魚を増やし、元彼女からの留守電を削除して、秘密の生活をはじめるのだ。


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期せずして生まれたオールタイム・ベスト



 ポップ、そしてスタイリッシュなラブストーリー。ウォン・カーウァイ(王家衛)監督のフィルモグラフィーに燦然と輝く『恋する惑星』(94)は、公開から30年近くが経過してもなお愛され、新たなファンを増やしつづけている。「時が流れても古びない格好良さ」という言葉は、この作品のためにあるのかもしれない。


 デビュー作『いますぐ抱きしめたい』(88)でいきなりカンヌ国際映画祭のカメラ・ドール(新人監督賞)にノミネートされたカーウァイは、『欲望の翼』(90)を経て『楽園の瑕』(94)の製作に入った。ところが、数々のスター俳優を起用した『楽園の瑕』は製作が難航。その完成を待たず、カーウァイは「もっと身軽に自由な感覚で映画を作りたい」との思いから本作の撮影に入ったのである。


『恋する惑星』予告


 本人の意志にかかわらず、この映画は図らずもカーウァイの運命を変えることになった。香港公開翌年の1995年には、「香港アカデミー賞」とも言われる香港電影金像奨で作品賞など4部門を受賞。『レザボア・ドッグス』(92)『パルプ・フィクション』(94)で一世を風靡していたクエンティン・タランティーノが本作に熱狂し、アメリカで紹介したことから、カーウァイと『恋する惑星』の名前は世界中に轟くことになった。


 映画監督ウォン・カーウァイを代表する“オールタイム・ベスト”である『恋する惑星』。この作品には、のちのカーウァイ作品に通じるテーマが早くも見え隠れしている。すなわち「時を流れても古びない格好良さ」の中には、90年代前半の香港の空気が濃厚に映し出されているのだ。本稿では、偶発的に生まれた、しかし緻密に作り込まれた映画の核心に接近してみたい。




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