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グレタ・ガーウィグの出世作『フランシス・ハ』。オスカー候補作『レディ・バード』との連続性とは?

グレタ・ガーウィグの出世作『フランシス・ハ』。オスカー候補作『レディ・バード』との連続性とは?


マンブルコアという、映画人ガーウィグにとってのホームグラウンドへの愛憎



 こういったパーソナルな要素を生々しく込めた映画作りを、なぜグレタ・ガーウィグは志すようになったのか? その視座から彼女を語るうえで欠かせない背景として、「マンブルコア」と呼ばれるアメリカのインディ映画シーンについて簡単に説明したい。


 マンブルコア(Mumblecore)とはゼロ年代のニューヨークにおける、当時の新世代による自主映画運動のこと。彼らは安価なデジタルカメラを使い、スタッフも出演者もみんな友人。サークル活動の延長のようなノリで映画作りを行ない、まったくのD.I.Y.で等身大のリアリティを追求していった。当然、映画の内容は日常における「自分(たち)ネタ」がベースとなる。


 これは山下敦弘(監督)や向井康介(脚本)、近藤龍人(撮影)、山本浩司(出演)といった大阪芸大組が卒業制作として撮った『 どんてん生活』(1999年)以降の、ゼロ年代のインディ日本映画の潮流にものすごく似ている(もっと言うと日本のほうが少し早かった)。まさに時代の必然として、国境を越えた無意識の共振が起こっていたと言うべきだが、そのマンブルコアの中心人物のひとりがジョー・スワンバーグという監督で、一時期ガーウィグは彼の恋人だった。


 ガーウィグは最初、スワンバーグ監督の『LOL』(2006年)に端役で出演し、次に『ハンナだけど、生きていく!』(2007年)で主演を務める。しかしスワンバーグとガーウィグの共同監督名義で発表された『Nights and Weekends』(2008年)という問題作を最後に、ガーウィグはマンブルコアから離れることになった。


 スワンバーグとガーウィグ自身が演じるカップルの赤裸々なセックス描写から始まる『Nights and Weekends』の製作過程は、実のところ極めて険悪なものだったという。以降、ガーウィグはノア・バームバック監督の『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』(2010年)や、あるいは『 抱きたいカンケイ』(2011年/監督:アイヴァン・ライトマン)といったハリウッド映画に出演するようになり、商業主義とは無縁の活動を矜持としていたマンブルコアから旅立った件をきっかけに、社会的上昇を果たしていくことになる。




 とはいえ『フランシス・ハ』は明らかにマンブルコア精神を強く引き継いだものだし、『レディ・バード』もあくまでその延長にある。ただしラフな即興重視だったマンブルコアの作風とは異なり、台詞も芝居も構成もかっちり組み立てる方法を取った。ガーウィグはマンブルコアという映画人としてのホームグラウンドへの愛憎を基盤とすることで、自らの個性をより明確に研ぎ澄ませていったのだろう。


 ちなみにガーウィグ以外の『フランシス・ハ』チームの特筆すべき出世組としては、『 スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)でカイロ・レン役に抜擢された、いまをときめくアダム・ドライバーがいる。『フランシス・ハ』では、イームズの椅子や棚にびっしりのヴァイナル盤(アナログレコード)などを揃えたアパートに友人と住み(フランシスの親友ソフィーいわく「この部屋自身が自意識過剰ね」)、いろんな女子を取っ替え引っ替え連れ込む、ヒップスター気取りの男子レヴを演じた。また、やはり同じノア・バームバック監督の『 ヤング・アダルト・ニューヨーク』(2014年)で彼が扮したジェイミーという青年は、まるで同役のヴァリエーションみたいな感じなので、ぜひ併せてチェックしていただきたい。



文: 森直人(もり・なおと)

映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「メンズノンノ」「キネマ旬報」「映画秘宝」「シネマトゥデイ」などで定期的に執筆中。



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『フランシス・ハ』

ブルーレイ&DVD 発売中

発売元:新日本映画社/​販売元:ポニーキャニオン

©Pine District, LLC.

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