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『デッドプール2』で加速するミュージカル&80年代愛!

(C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation

『デッドプール2』で加速するミュージカル&80年代愛!

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ミュージカルの女王、バーブラの名作が使われた理由は?



 まず印象的に登場するのは、映画『愛のイエントル』(1983)。デッドプールであるウェイドが、恋人のヴァネッサから「子供を作ろう」と誘われ、そこで気分を高めるために観るのが、なぜかこの作品。『愛のイエントル』は、女性が学ぶことを許されなかったユダヤ教の聖典であるタルムードを、ヒロインが男装して学ぼうとする物語。バーブラ・ストライサンドが監督と主演を務め、ミュージカルに仕立てた。ミュージカルと言ってもダンスシーンはなく、歌が中心となる『レ・ミゼラブル』系のパターンである。男女差別を訴えるフェミニズム的側面も強い。


 ちなみに製作当時、スター女優が映画監督を務めるというのは、ハリウッドでも異例であり、『愛のイエントル』はゴールデングローブ賞で作品賞(コメディ/ミュージカル部門)や監督賞を受賞したにもかかわらず、アカデミー賞では、その重要な2つの賞にノミネートすらされなかった。すでに当時、女性差別だと物議を醸した作品でもある。これが現在だったら、大変な騒動になっていたであろう。


 では、なぜ『愛のイエントル』が『デッドプール2』に登場したかというと、同作のメインテーマでもある曲が「 Papa, Can You Hear Me」で、ややスピリチュアルな歌詞なのだが、タイトルからわかるように父親に訴える内容である。ウェイドが子供の頃、彼の父親はウェイドとその母を捨てた。そんな過去がウェイドにはトラウマになっており、この『デッドプール2』では、何度か重要なシーンでウェイド/デッドプールが過去を思いながら、「Papa, Can You Hear Me」と口ずさむ。



『デッドプール2』(C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation


 『愛のイエントル』という作品は、女性が男装する行為の“象徴”にもなり、『デッドプール2』のあるシーンでは、性別を変えたくないという意味で「イエントルしたくない」とセリフが発せられる。日本語字幕では「イエントル」とは出ないので注意して聴き取って欲しいところだ。


 『デッドプール2』では、さらにもう一本、ミュージカル映画の名曲が登場する。『 アニー』の「 Tomorrow」だ。こちらは舞台や、つい最近の2014年にも映画でリメイク(『 ANNIE/アニー』)されているので、日本でも一般的に有名な曲。デッドプールの敵で、未来から来たケーブルの、ある「事件」に絡んで何度か流れる。「Tomorrow」の歌詞は「朝がくれば、いいことがある」「夢みるだけで、辛いことも忘れる」と、ケーブルの悲しい事情を代弁しており、意外にも感動の手助けをしてくれるのだ。そのケーブルが狙っているのは、少年ミュータントのラッセル/ファイヤーフィストで、彼はミュータントの孤児院で生活している。この状況は、ミュージカル『アニー』と同じなので、「Tomorrow」が使用されたのも納得である。



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