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『グランツーリスモ』ニール・ブロムカンプが描く、業界の常識を打ち破るカタルシス

『グランツーリスモ』ニール・ブロムカンプが描く、業界の常識を打ち破るカタルシス

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業界の常識を打ち破るカタルシス



 世界のサーキットやレーシングカーの挙動が詳細に再現されているゲームで、何千回、何万回と走る練習を積んだゲーマーであれば、プロレーサーに打ち勝てるのではないか……。この大胆なアイデアを思いついた者は、これまで複数いたのかもしれない。だが、本作でオーランド・ブルームが演じている人物のように、それを本当に実現させようと尽力するのはクレイジーで無謀といえるだろう。


 何しろ現実のレースでは、車内温度が約60度まで上昇したり、スペースシャトル離陸時の宇宙飛行士にかかる2倍の重力が、コーナーでは発生すると言われているのだ。つまりカーレースの現場では、アスリートとしての実力も問われるのである。ゲーマーにそんな過酷な競技が耐えられるはずがないと、思う人が多いのも仕方がない。また、クラッシュのリスクがない環境に身を置いてきた新人ドライバーに、不安を覚える者が多いのも理解できる。



『グランツーリスモ』


 ヤンの物語をきわめて娯楽的なものにしているのは、そうして軽視されているゲーマーが、大方の予想を覆し、プロの現場で堂々通用するカタルシスが存在するからだ。そして、オーランド・ブルームやデヴィッド・ハーバーが演じる、ヤンを導いていく人間たちも、それぞれに業界の常識を打ち破ることで、リベンジを果たすことになるのである。


 本作の監督は、『第9地区』(09)、『エリジウム』(13)のニール・ブロムカンプ。SF作品の印象が強いので意外な気もするが、もともと彼は以前よりモータースポーツへの憧れがあったのだという。考えてみれば、マシンのメカニズムやパーツなどのチューンナップが重要になるカーレーシングは、ブロムカンプ監督の理想の世界だと言えるのではないか。


 ブロムカンプ監督は本物のサーキット上で、新しいアプローチによる撮影に挑戦。人間の動きや従来のテクノロジーでは不可能なカメラワークを実現するために2タイプのドローンカメラを駆使している。広範囲を捉えることができるシネマティック・ドローンと、ドローンレースなどにも使用される、撮影者がドローンの視点で撮影できる、ファースト・パーソン・ビュー(一人称)カメラを装着したドローンである。これらを使い分けることによって、本作のレースシーンはスケール感とスピード感の両方を表現できているのである。



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