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ニール・ブロムカンプが『チャッピー』で暴き立てる、世界都市ヨハネスブルグの裏の顔

ニール・ブロムカンプが『チャッピー』で暴き立てる、世界都市ヨハネスブルグの裏の顔


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祖国への郷愁の念



 異色のSF作品『第9地区』(09)で鮮烈な長編デビューを飾り、いまなお世界中で支持され続ける、壮年の映画作家ニール・ブロムカンプ。『第9地区』では、初の商業用長編作品ながらアカデミー賞作品賞を含む4部門にノミネートされ、ハリウッドの業界人に衝撃を与えた。長編第2作となる『エリジウム』(13)では、貧困層と富裕層とを独自の視点から描写し、貧富の差の拡大を極めて克明に捉えている。ブロムカンプの長編デビューから早くも10年になるが、この間に発表した長編は3本。その最新作となるのが『チャッピー』(15)である。


 監督の生まれは1979年、南アフリカ共和国、ヨハネスブルグの出身。アフリカ大陸の中でも最大の発展都市である同市は、近年、治安の悪さが社会問題となり、ここ数年で上流、中流の階級層が流出、経済は悪化の一途をたどっている。監督は18歳でカナダのバンクーバーへ移住しているが、移住後も彼の人生には故郷(=ヨハネスブルグ)の存在が大きく影響した。その結果として、監督の作品では故郷ヨハネスブルグが描かれ続けている。




 『第9地区』ではヨハネスブルグ上空に飛来した異生命体の姿を活写し、その物語の中でアパルトヘイト(人種隔離政策)の悪しき偏見/差別思想をあぶり出している。『チャッピー』では同都市における経済と犯罪の結び付きをテーマに、南アフリカ社会の不条理な一面を見事に風刺して見せた。


 前述の通り、監督は18歳のときまでヨハネスブルグで生活し、その多感な時期には多くの社会的変化――アパルトヘイトの廃止など――を体験している。つまり、監督の人格を形成したのは郷里である南アフリカ、あるいはヨハネスブルグの存在そのものであり、監督の作家性の底流にあるのは、祖国への郷愁の念なのである。




 しかし、南アフリカでのアパルトヘイト関連法の撤廃以降は、白人に対する逆差別――逆アパルトヘイト――などが横行し、白人の国外脱出が相次いでいるそうだ。恐らく監督の家族も、そのような不安的な情勢を考慮し、カナダへの移住を選択したのであろう。監督が自身の作品の中でこれほど故郷(=ヨハネスブルグ)にこだわりを見せるのは、故郷を去った理由が自分の意思に反する形であるから、なのだろう。それこそが、いまの監督の強いノスタルジアに繋がっている……そんな気がしてならない。いずれにせよ、監督の作品には南アフリカという複雑な国の実態が色濃く反映されている。



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