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『軽蔑』ゴダール史上もっとも美しく、もっとも切ないラブストーリー
4Kで甦る映像美、そして流麗な音楽に酔う
本作の美を支えた撮影監督と音楽家にも触れておこう。撮影のラウル・クタールはゴダールの常連スタッフで、フランソワ・トリュフォーとの仕事でも知られるヌーヴェルヴァーグの名カメラマン。本作では冒頭のシーンで、カメラを回しているその姿を見ることができる。ゴダール作品では『女は女である』に続き、シネマスコープを取り入れ、ナポリやカプリ島の美しい風景を収めた。室内シーンでのキャラクターに密着した横移動ショットの妙も印象深い。
『軽蔑 60周年4Kレストア版』© 1963 STUDIOCANAL - Compagnia Cinematografica Champion S.P.A. - Tous Droits réservés
ジョルジュ・ドルリューによる弦楽の流麗なスコアも忘れ難い。とりわけ“カミーユのテーマ”は劇中で何度となく繰り返され、強い印象を残す。ちなみに、ゴダール作品の中で『軽蔑』をもっとも好きな作品に上げているマーティン・スコセッシ監督は、『カジノ』(95)でこのナンバーを流用していた。
CINEMORE掲載の『ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)』のシリル・ルティ監督のインタビューによると、現代の観客の中には、女性の体をモノのように扱う『軽蔑』はもう見ないと訴える人もいるという。個人的には、映画というものはそんなに単純ではないと反論したくなるが、ここでは止めておこう。いずれにしても、『軽蔑』は観客の心に焼き付く類の、強烈な映画である。4Kレストア版で、ぜひ触れてみて欲しい。
取材・文:相馬学
情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。
『軽蔑 60周年4Kレストア版』
11月3日(金・祝)よりヒューマントラストシネマ有楽町、
ヒューマントラストシネマ渋谷他にてロードショー
配給:ファインフィルムズ
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