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『ポトフ 美食家と料理人』が描くガストロミー/美食学の深み

(c)Carole-Bethuel(c)2023 CURIOSA FILMS- GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA

『ポトフ 美食家と料理人』が描くガストロミー/美食学の深み

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冷めた視点はトラン・アン・ユンならでは



 本作はガストロミーの起源に言及した着眼点と同時に、トラン・アン・ユンのカムバック作として注目が集まっている。かつて、12歳の時に母国ベトナムからフランスに亡命にし、以後、フランスのスタジオにサイゴンの街並みを再現した『青いパパイヤの香り』(93)や、ベトナムに戻って撮影した『シクロ』(95)、『夏至』(00)等で、カンヌ、ヴェネチアの各映画祭で高い評価を得たトラン・アン・ユンが、久しぶりにカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したからだ。



『ポトフ 美食家と料理人』(c)Carole-Bethuel(c)2023 CURIOSA FILMS- GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA


 『ポトフ 美食家と料理人』は、料理を哲学にまで高めたガストロミーという概念と、フランスに住む異国人としてのトラン・アン・ユンの冷めた視点が混ざり合い、情緒に傾くことなく、料理の深みを追求した傑作として評価されるべきだろう。特に、ブノワ・マジメルとジュリエット・ビノシュの好演により、物語が単なるラブストーリーを超越して食の深層へ分け入り、ありきたりな人間関係を再定義する後半は、味覚にすべてをかけた男女のいっさい譲歩しない姿勢が潔い。そこには新鮮な感動がある。


 本作は業界誌”Variety” による2024年のオスカー予想の国際長編映画部門で、トップを走るイギリス映画『The Zone of Interest』に次ぐ2位に付けている。



文:清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。現在、映画com、MOVIE WALKER PRESS、Safariオンラインにレビューやコラムを執筆。また、Yahoo!ニュース個人にブログをアップ。劇場用パンフレットにもレビューを執筆。著書に『オードリーに学ぶおしゃれ練習帳』(近代映画社刊)、監修として『オードリー・ヘプバーンという生き方』『オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120』(共に宝島社刊)。



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作品情報を見る



『ポトフ 美食家と料理人』

12月15日(金)Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

配給:ギャガ

©2023 CURIOSA FILMS – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA

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