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『ダーティ・ダンシング』1980年代ダンス映画ブームを鮮烈に締めくくる

(c)Photofest / Getty Images

『ダーティ・ダンシング』1980年代ダンス映画ブームを鮮烈に締めくくる

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犬猿の仲だったが、ダンスの相性は抜群



 ダンスを極める作り手たちの高い要求に応えたのが、主演の2人である。ジョニー役には、脚本家のエレノア・バーグスタイン(主人公のベイビーには、彼女の自伝的要素も濃厚)の強い要望で、パトリック・スウェイジが選ばれた。母親はダンス教師で、NYの名門ジョフリー・バレエのスクールにも在籍した過去があるスウェイジは、ダンスの素養は申し分なし。ジョニーとしてのダンスでは、役に合わせてあえて少しぎこちなく動いた部分もあったという。当時、ひざに長年の故障を抱えていたスウェイジは、踊る役を固辞しており、本作は製作側の強い要望で引き受けた。スウェイジは『ダーティ・ダンシング』の中の1曲で作曲も担当(「She’s Like the Wind」)。自ら歌っている。


 一方のベイビー役を任されたのは、ジェニファー・グレイ。多くの候補者を押しのけ、スウェイジとのダンスの相性で選ばれた。ダンスの経験はそれほど多くなかったグレイだが、本作のダンスシーンはほぼすべて自らこなしている。『フラッシュダンス』や『フットルース』で使われた“ダンスダブル”は本作では極力、避けられた。ジェニファー・グレイの父親は、ブロードウェイ・ミュージカルのスターで、映画『キャバレー』(72)ではアカデミー賞助演男優賞を受賞したジョエル・グレイ。その父の近年の姿は『tick, tick…BOOM! : チック、チック…ブーン!』(21)で確認できる。



『ダーティ・ダンシング』(c)Photofest / Getty Images


 大きな問題は、パトリック・スウェイジとジェニファー・グレイの関係で、彼らは以前に『若き勇者たち』(84)の現場で犬猿の仲となり、今回の再共演ではオーディション時からピリピリしたムードが漂っていた。そんな裏の関係性を知りながら本作を観ることで、逆に彼らのプロ意識を感じられ、役柄と俳優の関係性や、ダンスシーンでのそれぞれの思いを想像する楽しみは増える。


 本作の後、パトリック・スウェイジは『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)、『ハートブルー』(91)などでトップスターの地位を確立。ジェニファー・グレイは話題作に恵まれたとは言えず、本作と、直前に主人公の妹役で出演した『フェリスはある朝突然に』(86)が代表作となった。スウェイジは2009年、膵臓ガンで57歳で亡くなる。





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