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『ダーティ・ダンシング』1980年代ダンス映画ブームを鮮烈に締めくくる

(c)Photofest / Getty Images

『ダーティ・ダンシング』1980年代ダンス映画ブームを鮮烈に締めくくる

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『ダーティ・ダンシング』あらすじ

1963年の夏、裕福な医師の家に生まれた17歳の少女ベイビーことフランシス・ハウスマンは、家族と一緒にキャッツキル山地にあるリゾートへ避暑にやってくる。そこで彼女は、労働者階級のエンタテイメント・スタッフのリーダー、ジョニー・キャッスルと出会う。ベイビーはジョニーの官能的なダンスに夢中になり、彼からダンスの手ほどきを受ける。やがてベイビーは、ジョニーのパートナーとして舞台に立つことになる。


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新たなスタイルで踊ることにめざめた時代



 ダンス映画の歴史を振り返ったとき、1980年代はひとつのエポックを作った時代といえる。もちろんそれ以前も、“踊る”映画は数多く作られてきた。ハリウッドでは1940〜50年代がミュージカル映画の黄金期で、ジーン・ケリー、フレッド・アステアといった、“踊る”トップスターたちを大量に輩出。その後も『ウエスト・サイド物語』(61)や『ヘアー』(79)など、ダンスを革新するミュージカル映画は、いくつか生まれていた。しかし、映画のダンスそのものが社会現象を起こしたのは、1977年の『サタデー・ナイト・フィーバー』だろう。


 同作が育てたディスコブームとともに、80年代にかけて人々が踊る文化は急成長。オリヴィア・ニュートン=ジョンの「フィジカル」のMVや、ハリウッドスターのジェーン・フォンダが広めたエアロビクスも大流行した。この流れで映画でも、『フラッシュダンス』(83)、『フットルース』(84)と、ダンスを全面にフィーチャーした作品が大ヒットを記録。『サタデー・ナイト・フィーバー』で大ブレイクしたジョン・トラヴォルタの『ステイン・アライブ』(83)、さらに『ブレイクダンス』(84)のように新たなスタイルのダンスをテーマにした作品も生まれ、ミュージカルの金字塔的な作品の映画化『コーラスライン』(85)など、たしかに1980年代前半は、ダンス映画がひとつのムーヴメントを形成する時代だった。


「フィジカル」MV


 その80年代ダンス映画ブームで、後半の大役を果たしたのが、1987年の『ダーティ・ダンシング』であった。タイトルにある「ダーティ」は、悪く解釈すれば「汚らわしい」と捉えられるが、実際には「固定観念を消すほどに新しい」という意味が込められていそう。劇中で伝統的なソーシャルダンスと対比されながら、若者たちが踊る官能的で強烈なダンスがカッコよく描かれるからだ。


 1963年の夏、両親と姉とともに避暑地へ向かった17歳のベイビーが、ダンスのインストラクター、ジョニーと出会う物語。「それはケネディ大統領の暗殺の前のことで、私はベイビーと呼ばれていた」とヒロインのナレーションにあるように、80年代から60年代をノスタルジックに回顧する作品でもある。舞台となる避暑地のキャッツキルは一種のリゾート施設で、そこを訪れる、主に中流階級以上の人たちがスポーツやパーティ、ダンス、仮装大会などを楽しむ。映画が作られた80年代後半に、この風景はすでにちょっとノスタルジックだったのかもしれない。中流家庭で上品なものに囲まれて育ったベイビーにとって、腰をくねらせ、絡み合うようなダンスは鮮烈で、新たな世界に踏み出す彼女の成長が、ダンスのスタイルに重ねられていく。





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