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『恋しくて』ザ・ローリング・ストーンズに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、本作をめぐる奇妙な縁

(c)Photofest / Getty Images

『恋しくて』ザ・ローリング・ストーンズに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、本作をめぐる奇妙な縁

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『バック・トゥ・ザ・フューチャー』との奇妙な縁



 1980年代中盤頃、売れっ子監督となったスティーヴン・スピルバーグが、『グレムリン』(84)や『グーニーズ』(85)などで製作総指揮として作品に参加するようになったことと同じように、『ブレックファスト・クラブ』(85)や『フェリスはある朝突然に』(86)をヒットさせたジョン・ヒューズもまた、『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(86)や『大混乱』(88)で、本作のハワード・ドゥイッチに監督を任せるようになっていた。現在では映画監督がプロデューサー側に回ることは珍しくないことだが、当時はまだ垣根のあった時代。やがて、『恋の時給は4ドル44セント』(90)や『ホーム・アローン』(90)でも他人に監督を任せ、自身は製作や脚本に徹することで、ジョン・ヒューズは監督業から距離を置くようになっていた。


 この時代、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を担って大ヒットさせた作品に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)がある。この映画でリー・トンプソンは、マイケル・J・フォックス演じる高校生マーティの母親役を演じたことで、一躍人気女優になったという経緯があった。既にお気づきの方もいらっしゃると思うが、エリック・ストルツとリー・トンプソンは本来『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で共演しているはずだったのだ。マイケル・J・フォックスが演じたマーティ役は、当初エリック・ストルツで撮影されていたという裏話は誰もが知るところだろう。しかもエリックは、6週間もマーティ役を演じた末に降板させられた憂き目に遭っている。



『恋しくて』(c)Photofest / Getty Images


 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督と脚本のボブ・ゲイルは、のちに第43回ゴールデン・グローブ賞で助演男優賞候補となる『マスク』(84)の演技を観て、エリック・ストルツの起用を考えたと述懐。その際、エリックが準主役で出演した過去作『ワイルド・ライフ』(84)で共演していた若手女優に白羽の矢が立った。そう、リー・トンプソンである。エリック・ストルツと共演していたおかげで、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の母親役を得たリー・トンプソンだったが、皮肉なことにエリックの降板によって、『恋しくて』まで再共演が持ち越されることになったという奇縁があるのだ。


 斯様な奇縁はほかにもある。『ワイルド・ライフ』ではエドワード・ヴァン・ヘイレンが音楽に参加しているが、その中の1曲「OUT THE WINDOW」が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の劇中で引用されているのだ。マーティの父ジョージが、ウォークマンから流れるエレキギターの爆音で目覚める場面。防護服を着たマーティの手に「エドワード・ヴァン・ヘイレン」とペンで記されたカセットテープがあるのを確認できる。この時使用されているのが「OUT THE WINDOW」なのである。


 さらに、『ワイルド・ライフ』には、ザ・ローリングストーンズのもうひとりのギタリストであるロン・ウッドがカメオ出演している。劇中ではザ・ローリングストーンズの「イッツ・ノット・イージー」を、ロン・ウッドとメジャーデビュー前のチャーリー・セクストンがカバーしたバージョンを使用。ちなみに、『恋しくて』では(その後メジャーデビューした)チャーリー・セクストンのヒット曲「ビーツ・ソー・ロンリー」がパーティ場面で使われている。ここまで来ると、意図されているのではないかと邪推したくなるほどの奇縁を感じてしまう。





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