『恋しくて』あらすじ
ドラムを叩くのが趣味のワッツは、幼馴染のキースに恋をしている。男顔負けの口を利く癖に、どうしても自分から告白できない。一方、物静かで穏やかなキースは、ハイスクールのマドンナ、アマンダに夢中で、ワッツに恋の相談を持ちかける。アマンダのボーイフレンドはプレイボーイのハーディで、キースが勝てるわけがない。しかしキースは、アマンダをデートに誘うことに成功する。彼女をとられて面白くないハーディがキースの恋路を妨害しようとしていることに気付いたワッツは、キースに恋のてほどきをしてあげる。
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ザ・ローリング・ストーンズとの由縁
『恋しくて』(87)は、メアリー・スチュアート・マスターソンがドラムを叩くショットで幕が開ける。つまり、この映画にとって“音楽”という要素がとても重要であることを示唆している。例えば、役名。メアリー・スチュアート・マスターソンが演じるワッツという役名は、ザ・ローリング・ストーンズのメンバーだったチャーリー・ワッツの名前が由来となっている。ワッツがドラムを叩いているのは、チャーリー・ワッツがドラマーだったからに他ならない。
また、エリック・ストルツが演じたキースという役名は、ザ・ローリング・ストーンズのギタリストであるキース・リチャーズの名前から拝借したもの。ワッツは幼馴染であるキースへ密かな恋心を抱いているが、ボーイッシュな外見から「レズビアン」などと同級生から心無い揶揄いの対象となっているという設定。一方のキースは、学園のマドンナであるアマンダに恋している。思い切ってアマンダをデートに誘ったキースに対して、ワッツが嫉妬するという三角関係が描かれてゆくのが『恋しくて』の主たる物語だ。
『恋しくて』予告
ちなみに、リー・トンプソンが演じたアマンダ・ジョーンズという名前にもザ・ローリング・ストーンズとの由縁がある。ストーンズが1967年に発表したアルバム「ビトゥイーン・ザ・バトンズ」に収録されている楽曲「ミス・アマンダ・ジョーンズ」がその元ネタ。『恋しくて』では、アマンダが恋人のスポーツカーに乗って高校へやって来る場面でマーチ・バイオレッツによるカバーバージョンを使用。製作・脚本のジョン・ヒューズの音楽に対するこだわりは、<ヒューズ・ミュージック>という音楽レーベルを立ち上げて、『恋しくて』のオリジナル・サウンドトラック・アルバムを発売したことにも表れている。
「ミス・アマンダ・ジョーンズ」の歌詞に登場する、アマンダなる女性が誰であるかについては諸説ある。一説には、早逝したザ・ローリング・ストーンズ初代リーダーのブライアン・ジョーンズと、一時期交際の噂があったモデルのアマンダ・リアのことではないかと言われている。彼女は芸術家サルバドール・ダリのミューズだったことでも知られる人物だ。当時、ブライアンはモデルのアニタ・パレンバーグと交際していたが、彼のDVに悩んだアニタは色々あってキース・リチャーズと交際。バンド内で奇妙な三角関係が生まれていた。キースがアイラインのメイクを施すようになったのはアニタの影響によるものだと言われているが、メアリー・スチュアート・マスターソンが演じたワッツはアニタのメイクを踏襲していて、事情がやや込み入っている。