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『ダム・マネー ウォール街を狙え!』デジタルネイティブが起こす新時代の革命

© 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』デジタルネイティブが起こす新時代の革命

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株価下落を狙う「空売り」とは



 「空売り」といえば、アダム・マッケイ監督がリーマンショックを題材にした『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15)でお馴染みとなった手法だ。通常、株式投資は企業の株を購入して、市場価値が上がることによって利益を得るのが基本だが、この「空売り」は、逆に株価が下落すれば儲かるという仕組みになっている。「信用取引」などを利用して株を借りて、それを売り付けた後に株を買い戻して返済するのである。買い戻すときに株価が下落していれば、その差額が利益となる。


 この手法は違法とはいえないが、市場や企業の繁栄を願う通常の株式投資に対し、倒産や不景気を願っている行為であるため、市場のなかでは倫理的に歓迎されない行為であるといえるだろう。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』でも、ブラッド・ピットが演じていた人物が、リーマンショック時の「空売り」で儲けながらも、はしゃいでいる仲間に対して「君たちは経済が破綻することに賭けたんだ。何百万の人々が、職や家を失うんだ」と、嗜めている。


 キースが呼びかけたのは、資金力を背景とした「ヘッジファンド」が「空売り」を仕掛けている状況に対し、その企業の株を買い支え、逆に株価を上昇させようとする、「ショートスクイーズ(踏み上げ)」という動きだ。株価が上がれば上がっただけ、「空売り」勢は損失をこうむることになる。



『ダム・マネー ウォール街を狙え!』© 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.


 面白いのは、キースの提供する動画などによって、若者や小口の投資家を中心とする資金力のない人々が、この呼びかけに応じて、株を購入し始めたという事実だ。つまり、YouTuberの煽動によって、企業の株価が大きく変動する事態となったのだ。この流れは止まらず、「ヘッジファンド」の投資家たちは高額となった株を買い戻さざるを得ない状況に陥り、逆に「ゲームストップ」の株を持った者たちは、大きな利益を得ることになるのである。


 本作では、この狂騒状態を、「ネットミーム」などと呼ばれる、インターネットのネタ動画とともに“マッシュアップ(混ぜ合わせ)”をしながら見せていく。本作の製作のきっかけとなったのは、監督のクレイグ・ギレスピーの20代の息子が、実際にトレンドの波に乗って、「ゲームストップ」株を購入していた一人だったということだ。本作の演出は、まさにそんな若い世代が、インターネットでの繋がりを楽しみながら投資をしていた状況を描いているのだ。




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