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『マンハッタン』NYを象徴する「絵」、そして時代とともに変わる評価

(c)Photofest / Getty Images

『マンハッタン』NYを象徴する「絵」、そして時代とともに変わる評価

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後になって深い意味を感じる偶然のリンク



 『マンハッタン』の直前の1978年、ミア・ファローが養子として迎え入れたのがスン=イーで、ファローとアレンが私生活のパートナーとなった後、アレンはスン=イーが21歳の時に肉体関係を持ち、彼女との結婚に至る。さらにファローとアレンの養女で、当時7歳だったディランに対して、アレンが性的虐待を行なっていた疑惑が持ち上がり、一大スキャンダルへと発展。この一連の騒動も、『マンハッタン』を冷静に受け止められない要因を作った。ディランの事件に関してアレンは無罪となったものの、2017年、ハーヴェイ・ワインスタインの性加害問題によって、アレンの過去が再び話題になり、ファロー側との対立でドキュメンタリーが作られるほどになった。アレンの新作がアメリカで公開できない事態にも発展する。


 また、ミア・ファローと『マンハッタン』の関係でいえば、同作に惚れ込んだファローが、アレンに熱烈なラブコールを送ったことが有名。それをアレンも受け入れ、以降、ファローを主演に迎えた作品を撮るようになる。『マンハッタン』には、短い登場ながらファローの姉、ティサ・ファローが出演している。アイザックらとパーティで芸術談義をする一人で、セリフもある役だ。ミア・ファローにしてみれば、姉に先を越された思いもあったのかもしれない。



『マンハッタン』(c)Photofest / Getty Images


 また劇中でアイザックがフランク・シナトラを敬愛するセリフが出てくるが、シナトラがミア・ファローの最初の夫だったというのも、今となっては皮肉だ。さらにファローの2番目の夫で、スン・イーの父親でもあるのが名指揮者のアンドレ・プレヴィンで、『マンハッタン』のオープニングで使われた「ラプソディ・イン・ブルー」は、プレヴィンが指揮したバージョンもよく知られ、これもちょっとした偶然である。


 このように考えれば、『マンハッタン』という作品は、そのものの評価を超えて、ウディ・アレンという映画作家の人生に、さまざまな点で影響を与えたものであることがよくわかる。それも今こうして振り返れば理解できるわけで、映画というものが歳月とともに印象を変える芸術であることを改めて痛感する。



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。



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