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『フック』大人と子供の間で揺れ動くスピルバーグの心理模様

(c)Photofest / Getty Images

『フック』大人と子供の間で揺れ動くスピルバーグの心理模様

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スピルバーグのライフステージの変容と重なる



 実は、スピルバーグが「ピーター・パン」の映画化を思い描き始めたのは80年代序盤のこと。一時は、マイケル・ジャクソンを主演に据えて映画化できないか可能性を探った時期もあったようだ。しかしなかなか実現には至らなかった。


 そうしているうちに、独身だった彼はエイミー・アーヴィングと結婚し、二人の間には子供が生まれた。映画への情熱を捧げ続けてきた永遠の少年は、ついに父親になったのだ。だがその後、結婚生活は長く続かず、89年には離婚を決意するに至る。


 そこから91年のケイト・キャプショーとの再婚で家庭生活の再出発を図るわけだが、こういった中で製作された『フック』には、スピルバーグが家族を築こうとする姿勢や、父親とは何か、自分はどうあるべきかを自答する心理模様がメタのレベルで刻まれているように思える。



『フック』(c)Photofest / Getty Images



我が子への思いと、実父への思い



 また、スピルバーグの自伝的映画『フェイブルマンズ』(22)を見ると改めてよくわかるように、他でもない彼自身が、両親の離婚という問題に思い悩みながら育った子供だった。加えて『E.T.』(82)が、「離婚」や「父親の不在」といった要素が少年の心に与えた影響を繊細に綴った作品であることは、今となっては誰もが知るところだろう。


 HBO制作のドキュメンタリー『スピルバーグ!』(17)によると、父母が離婚した時、何も明かさず家族のもとから去った父のことをスピルバーグと妹たちは長らく拒絶し続けたという。(実際には『フェイブルマンズ』で描かれていたように、母と父の親友との関係も離婚の一因だった)。


 もしかすると、『フック』におけるピーターと息子の関係性には、スピルバーグと我が子のみならず、かつて家族のもとを去った実父との関係性さえもが二重に投影されているのかもしれない。興味深いことに「父性の回復」や「父との和解」というテーマは89年に製作された『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』でも如実に描かれている。





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