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『ベイビー・ドライバー』カーアクションとミュージカルがまさかの融合!画期的なアイデアに刻まれた、80年代音楽映画の影響とは!?

『ベイビー・ドライバー』カーアクションとミュージカルがまさかの融合!画期的なアイデアに刻まれた、80年代音楽映画の影響とは!?


受け継がれる「音楽」×「カーアクション」の遺伝子



 ところで、ライト作品には数々の名作映画、特にジャンル・ムービーの遺伝子が見え隠れすることで知られる。今回も『ザ・ドライバー』や『バニシング・ポイント』、『ミニミニ大作戦』を始め、日本のアニメーション『ライディング・ビーン』などもバック・グラウンドとして含まれる中、ここでライトが80年公開の世界的大ヒット作『ブルース・ブラザース』の影響を挙げているのも忘れてはならない。


 そこに登場するのは、サングラスに黒スーツの怪しい兄弟。彼らは「ブルース・ブラザース」と名乗り、道行く先でブルースやソウルミュージックのナンバーをノリノリで演奏する。人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」で生まれたこのキャラクターは、のちに発表したアルバムが大ヒットを記録するなどセンセーションを巻き起こし、映画という大舞台でもジェームズ・ブラウンやアレサ・フランクリン、レイ・チャールズなどの華々しい顔ぶれが華を添えて大ヒットを記録した。




 また、監督のジョン・ランディスといえば、マイケル・ジャクソンの「スリラー」の伝説的なPVを手がけたことでも知られる巨匠だが、とにかくこのノリに乗った『ブルース・ブラザース』の奇想天外な発想と、音楽の勢いを借りた怒涛の展開は、今見てもすごい。すごすぎる。



 膨大な数のナンバーを作品内で炸裂させるのはもちろんのこと、なおかつ本作はことあるごとにギャグの範疇を超えるような本気度の高いカーアクションを連発。これがまたすごいのだ。ショッピングモールの中であらゆる店舗を破壊し尽くすカーチェイスが繰り広げられたり、シカゴの街並みの中を34台もの車輌が大爆走したり、車の落下するシーンのために本当にヘリで上空へ釣り上げて地面に叩き落したり、極限まで実写主義にこだわったガチのカーアクションのオンパレード。そのスケールの大きさは、当時を知るスタッフが「撮影中、みんな自分たちのやっていることの意味がわからないと混乱していたよ」と呆れ顔で打ち明けるほどだ。


 そして、当時はミュージカルといえば、登場人物が自分の心情をメロディに乗せて歌うというオーソドックスなスタイルが一般的だったが、本作は決してそれだけではなく、アクションや物語の展開そのものを音楽に乗せて描いていく型破りの手法がとられた。


 スタッフや出演者は当時を振り返ってこのように語っている。 


「カーチェイスの場面にもリズムがあるんだ。ちゃんとしたミュージカルナンバーになりえているし、車がダンスしているのがわかる」 


 どうだろう、この言葉。37年後の今、『ベイビー・ドライバー』へと通底するものをひしひしと感じさせられるではないか。 


 『ベイビー・ドライバー』は「音楽」×「カーアクション」という極めて独創的なアイディアを具現化した作品ではあるものの、これは何も突然変異で生まれたわけではなさそうだ。その土台となる部分には、『ブルース・ブラザース』をはじめとする数々の作品が過去に切り開いてきた時代性や先駆的な感覚があったのは言うまでもない。


 かくもエドガー・ライトが放つ本作は、新旧の名作が互いに激しくクラッシュしあった末に生まれた奇跡的な産物である。その世界に触れるだけで、私たちは映画の視野をもっと広げることが可能となる。それはまさに我々にとって、ひいては映画というメディアそのものにとっても、とびきり幸福な瞬間と言えるだろう。




文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。 



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2017年8月19日(土)公開


※2017年8月記事掲載時の情報です。

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