ロッキーを背負うスタローンのイメージに合わせた主人公像
スタローンは当時、『ロッキー』(76)とその続編『ロッキー2』(79)で人気者となり、監督業にも進出したが、同シリーズ以上のヒット作を生み出すことは容易ではなかった。本格的なアクションとしては初の主演作となったポリスストーリー『ナイトホークス』(81)もポテンヒットに終わる。彼にはホームランが必要だった。そんなときに出会った『ランボー』が、彼の俳優人生を大きく変えることになる。
スタローンが『ロッキー』で体現した人間的な魅力を生かすべく、脚本は書き換えられた。その最たる例が、この映画ではランボーが故意に人を殺さないこと。原作のランボーは生き延びるために何人かを殺害する。しかし、それはロッキー・バルボアならば決してやらないこと。劇中ではランボーを攻撃した警官が反撃されヘリから墜落死するが、それも正当防衛に見えるよう描写には細心の注意が払われている。
ランボーが過酷な戦場でPTSDを負ったという設定にも、スタローンの人間的なキャラクターが表われている。ランボーはまったく犯罪行為をしていないのに、逮捕され、投獄され、いたぶられる。このとき、彼の脳裏にはベトナムで受けた壮絶な拷問が脳裏をよぎるのだ。兵士の本能が甦ったランボーは反射的に警官たちをのしてしまう。これが彼の悲劇の始まりだった。