キューブリックまで巻き込んだ!?アポロ計画陰謀論
近年も、アポロ計画陰謀論を取り入れた作品が相次いで製作されている。そこでキーを握るのはスタンリー・キューブリックである。前述の『Operation Lune』でもキューブリックが月面映像の捏造に加担したことになっていたが、この番組が世界的に話題になったことも影響しているようだ。
『ムーン・ウォーカーズ』(16)では、NASAが有人月面着陸を実現できそうにないと判断したアメリカ政府が、キューブリックに依頼して月面の捏造映像を制作することを思い立ち、CIAの諜報員を派遣する。しかし、キューブリックに面会するはずがニセモノに引き合わされて製作費も巻き上げられ、結局アングラ映画の監督に捏造映像の制作を依頼することに――というコメディタッチの内容である。
『ムーン・ウォーカーズ』予告
Netflixで配信されている『アバランチ作戦』(16)は、NASAの内部にソ連のスパイを追って潜入したCIAの若手職員がアポロ計画の重大な秘密を掴んでしまい、月面映像を捏造することになるという話で、『2001年宇宙の旅』(68)を撮影中のスタジオに潜入し、月面映像をどう撮っているかリサーチするのが面白い。キューブリックも顔を見せ、そのノウハウを得て自分たちでスタジオにセットを作って撮影するというもの。全篇を流出した記録映像という形で描き、ディテールも凝っているので、日本で劇場未公開なのが惜しいと思えるほど。
最後に、アポロ計画をもとにした映画たちに新たな1本が加わろうとしている。2019年に公開される『ファースト・マン』は、アポロ11号の船長ニール・アームストロングの視点から描いたもので、ライアン・ゴズリングが『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督と再びコンビを組んだ話題作だ。前述したように、あまりにも有名なアポロ11号の映像が残っているだけに、月面飛行を最新技術で描くだけではただの再現にしかならない。今、こうした映画を作るなら従来とは異なる戦略が必要になるはずだが、この監督×主演コンビなら、映画の中で陰謀にまみれてきたアポロ計画に新たな視点を見つけ出して見せてくれるのではないか。
文: モルモット吉田
1978年生。映画評論家。別名義に吉田伊知郎。『映画秘宝』『キネマ旬報』『映画芸術』『シナリオ』等に執筆。著書に『映画評論・入門!』(洋泉社)、共著に『映画監督、北野武。』(フィルムアート社)ほか
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