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『カプリコン・1』あの大物監督もNASAに加担した!?陰謀の宇宙映画史

『カプリコン・1』あの大物監督もNASAに加担した!?陰謀の宇宙映画史

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ウォーターゲート事件とNASAの協力が生んだリアリティ



 映画は時代を映す鏡でもあるだけに、その時々によって評価も変わる。実際、ある時期には見向きもされなかった企画が、時代状況が変わるとタイムリーな企画として受け入れられることがある。『カプリコン・1』は60年代後半から70年代初頭のアメリカを取り巻く社会が映画化を後押ししたと言っていい。


 監督のピーター・ハイアムズが本作の脚本を書いたのは1969年――アポロ11号が月面に着陸し、人類初の月面歩行を行った時代にまで遡る。月面着陸の中継を眺めながら、自分たちはあまりにも新聞、ましてや映像で見られるTVを信用しすぎているのではないか。もし、この月面着陸そのものが嘘だったなら? という発想を基に脚本が書かれた。もともとハイアムズはCBS・TVニュース社でベトナム戦争のドキュメンタリーなどを手がけ、権力が介入して真実が捏造されるのを目の当たりにしてきたというだけに、アポロ計画に懐疑の目を向けたのも不思議ではあるまい。




 60年代末の段階では、『カプリコン・1』の脚本は、どの映画会社からも相手にされなかった。時には激しい拒絶にさえあったという。要は荒唐無稽というわけだ。だがハイアムズ監督は「逆にイケると思ったよ。強い反応があるというのは悪いことではないからね」(『キネマ旬報』)と、数年間この脚本を寝かせることにした。


 そしてアポロ計画が打ち切られた1972年、やがて現職大統領の辞任にまで発展する国家ぐるみの陰謀と裏工作が露見したウォーターゲート事件によって、『カプリコン・1』は〈荒唐無稽〉から一転、生々しい現実を描いた作品として映画会社に受け入れられるようになった。


 いざ製作の準備が始まると、カー・アクションやスカイ・アクションも盛り込まれたサスペンス・アクション大作だけに、クリアしなければならない問題は山積したが、何より、中継を見る全世界の人々を欺くだけのリアリティが求められる宇宙船と火星のセットをどうするのかが焦点となった。幸い、撮影に入る半年前にバイキング1号・2号が連続して火星に着陸し、火星の地表の写真を送ってきたことで、想像ではなく実物に近づけた火星のセットを作り出すことが可能になった。




 さらにNASAから協力を取り付けたことで、宇宙船の着陸船はアポロ計画の設計図をもとに原寸大で製作され、司令船に至っては原物を供与されている。これは、本作のプロデューサーであるポール・N・ラザルス3世が『未来世界』を製作した際に培ったNASAのコネを活用したことで可能になったものだ。流石、海千山千のプロデューサーだけあって、彼はNASAに脚本を見せず、大まかなあらすじを話しただけだった。


 NASAの上層部が顔色を変えたのは、撮影後半にそれまでのラッシュを見せてからである。以降はそれまでのような協力を得られなくなったようだが、ハイアムズ監督によれば、NASAの下部組織の連中は終始友好的だったという。人類が月に行ったことを確信しているだけに、こうした映画を虚構として受け入れる度量があったから――というのがその理由だが、そうした大人の態度を取るNASAにハイアムズは、「ほんとうは“この映画はNASAの様々な妨害圧力にもかかわらず作られたものです”という断り書きを映画の初めに出したかった」(『キネマ旬報』)と悔しがっている。



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