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『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』香港アクション&ノスタルジーの向こう側へ

©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』香港アクション&ノスタルジーの向こう側へ

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殴る、飛ぶ、刺す、撃つ!



 めくるめく大アクション絵巻である。小さな面積に異常発達した九龍城砦をリアルに再現したセットのもと、「そんなわけあるかい!」と突っ込みたくなるほどの“強すぎる男たち”が、あらゆるスタイルのアクションを縦横無尽に展開する。狭い路地裏やビルの一室、廊下、階段など、ほとんどの空間は広くないが、だからこそアクションのバリエーションが映画のキモとなった。


 アクション監督は『るろうに剣心』シリーズやドニー・イェン作品などを手がける谷垣健治。拳と拳を交わし合う接近戦の武闘から、ほとんど無重力のコミック的アクションまで、さまざまなスペクタクルを詰め込んだ、さながらアクションの幕の内弁当のようなつくりで観客を飽きさせない。約5,000万香港ドルという巨額の予算が投じられた、おそろしい作り込みによる九龍城砦も見ているだけで楽しいクオリティだ。


 全編にわたり、アクションの魅力をその肉体で表現するのが香港映画界の俳優たちである。主人公の陳洛軍を演じる『神探大戦』(22)のレイモンド・ラムをはじめ、九龍城砦の“若手”たちには、香港のみならず台湾映画界でも人気沸騰中のテレンス・ラウ(信一役)、『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件』(23)など話題作が続くトニー・ウー(十二少役)、アクション監督としても活躍するジャーマン・チョン(四仔)といった顔ぶれが集結。



『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.


 また、香港映画の歴史とアクションのノウハウを身体に刻み込んだ往年のスターたちも、演技にとどまらない厚みを作品にもたらした。龍捲風役のルイス・クー、大ボス役の言わずと知れた“レジェンド”サモ・ハンをはじめ、リッチー・レン、ケニー・ウォンら長年のキャリアを誇る名優が集結。特別出演のアーロン・クォックは、“殺人王”陳占を演じ、回想シーンだけの登場ながらルイス・クーとの痺れるようなやり取りと格闘を見せてくれる。


 そんななかで異彩を放つのが、“大ボス”に仕える王九役のフィリップ・ン。幼い頃にアメリカへ移住し、武道の修練を積んだあと、大学で教育やグラフィック・デザインを学び、教員としての経歴もある異色の俳優だ。演じた王九は気功を自在に操り、刀や銃などの攻撃を完全に防御できるという(メチャクチャな設定の)悪役。ぶっ飛んだビジュアルと耳に残る笑い声をもって怪演し、本作でみごとブレイクした。


 登場人物は多いが、ストーリーそのものはシンプルで、やがて陳洛軍を軸とした一種の復讐譚に収斂してゆく。なによりもポイントは、アクションこそが映画を展開する原動力となっていること。映画としての楽しさを担保するだけでなく、アクションが登場人物の心理を物語り、キャラクター同士の関係性を前進させてゆく。


 「アクションがストーリーを語り、キャラクターを深めてゆく」のは、いまやアジアだけでなく、ハリウッドの超大作を含む現代アクション映画の作法だ。そこに香港アクションならではのケレンと味わいを存分に織り込みながら、ときにゾッとするほど恐ろしい暴力と殺人を交えてくるところに、この映画独特のストーリーテリングがある。





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