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『阿修羅のごとく』家族の呪いを笑って吹き飛ばす、四姉妹の有為転変ホームドラマ

『阿修羅のごとく』家族の呪いを笑って吹き飛ばす、四姉妹の有為転変ホームドラマ

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『阿修羅のごとく』

1979年の東京。生き方も性格も異なる4姉妹が知った、老齢の父親の不倫。これをきっかけに、一見平穏な家族関係の裏に渦巻く感情が、少しずつその姿を見せはじめる。


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是枝裕和×向田邦子×八木康夫



 是枝裕和が、あの名作ホームドラマ『阿修羅のごとく』をリメイクする。最初にこのニュースを知ったときは、完璧なマッチングだと膝を打った。


 原作・脚本は、『寺内貫太郎一家』(74-75)や『あ・うん』(80)など、ホームドラマの名手として知られた向田邦子。生け花の師匠として生計を立てている長女・綱子、2人の子供を持つ専業主婦の次女・巻子、恋愛に不器用な図書館司書の三女・滝子、無名ボクサーと同棲しているウエイトレスの四女・咲子の、性格も生き方も異なる四姉妹の家族劇が描かれる。


 このプロジェクトを実現させたキーパーソンは、企画・プロデュースを担当した八木康夫。TBSのドラマプロデューサーとして、これまで『うちの子にかぎって…』(84-87)、『パパはニュースキャスター』(87)、『魔女の条件』(99)、『おやじの背中』(14)といった作品を手がけてきた。2018年にTBSを退社して以降は、フリーランスの立場でテレビ東京のスペシャルドラマ『人生最高の贈りもの』(21)、NHKの連続ドラマ『団地のふたり』(24)などをプロデュース。精力的に仕事を続けている。


 そんな八木康夫にとって、『阿修羅のごとく』は念願の企画。向田邦子脚本のドラマ『家族熱』(78)でADをしていた彼は、彼女に「いつかお仕事を一緒にさせてください」という熱いメッセージを伝えていた。だが1981年の航空機墜落事故で、向田邦子は51歳の若さでこの世を去り、それは叶わぬ約束となってしまう。それでも心の奥底では、彼女の作品を作りたいという想いが燻り続けていた。『阿修羅のごとく』のリメイクは、40年越しの夢だったのである。



Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』


 1979〜80年にかけて放送されたNHKドラマ版は、加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュン。2003年に公開された森田芳光監督による映画版は、大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子。そして2022年の舞台版は、小泉今日子、小林聡美、安藤玉恵、夏帆。谷崎潤一郎の『細雪』に登場する四姉妹のように、『阿修羅のごとく』の四姉妹役もまた、その時代を代表する女優たちによって演じられてきた。


 そして今回のリメイク版にキャスティングされたのは、宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず。八木康夫自ら声をかけ、4人とも快諾してもらったのだという。「夢の共演」という表現はあまりにも使い古された常套句だが、彼女たちが1つの画面に収まっている姿を見ると、思わずこの言葉が頭のなかをよぎってしまう。


 そして八木康夫が監督として声をかけたのが、是枝裕和。今や“世界のコレエダ”とも称される、日本を代表する巨匠。偶然にも彼は、『阿修羅のごとく』の一場面をワークショップで取り上げていた。それを聞きつけた八木康夫からオファーを受け、プロジェクトに参画することに。かつて傑作『海街diary』(15)を世に送り出した名匠は、はからずももう一度四姉妹の物語を描くことになったのである。




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