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『怪物』是枝裕和監督 現場での悩みが少ない、完成度の高い脚本でした【Director’s Interview Vol.319】

『怪物』是枝裕和監督 現場での悩みが少ない、完成度の高い脚本でした【Director’s Interview Vol.319】

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スクリーンにあるものが観ている自分に反射してくる、まるで鏡を突きつけられている感覚。ふと、「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という言葉を思い出したが、実はこの言葉の前には「怪物と戦う時は、その過程で自らも怪物にならぬよう心せよ」という言葉が存在する。制作者たちがこの言葉を意識したかどうかはさておき、オールスターキャスト出演のミステリー映画という形を取りつつ、ここまで深遠な問いかけをしてくるのは見事。


脚本の坂元裕二、音楽の坂本龍一、プロデューサーの川村元気、そして監督の是枝裕和と、稀代のヒットメーカーが集結したこの話題作は、全ての情報をシャットアウトしてご覧になることをお勧めしたい。そんな中での監督インタビューということで恐縮だが、作品の内容やテーマには極力触れず(*)、あくまでも制作過程にフォーカスしつつ監督に話を伺った。


*)ネタバレには触れていませんが、気になる方は映画観賞後にご覧ください。



『怪物』あらすじ

大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した―



※動画版も追加公開しました! ぜひ両方でお楽しみください。



Index


完成度の高い脚本



Q:脚本の坂元裕二さん、プロデューサーの川村元気さん、山田兼司さんたちと一緒に脚本開発をされたとのことですが、一人で脚本を書いている時とはどんな違いがありましたか。


是枝:普段自分で書いているときも、周りの人に読んでもらいながら意見交換をしつつ決定稿を作っていきます。撮影の現場でも、スタッフやキャストに意見をもらって直すこともあります。だから(今回もこれまでも)どちらも共同作業と言えますが、撮影が始まる前にプロデューサーたちとじっくり脚本を作ったのはデビュー作以来ですね。とても新鮮でしたし、現場で悩みが少なかったのは間違いないです。



『怪物』©2023「怪物」製作委員会


Q:現場で悩みが少なかったということは、撮影前には内容が完全に固まっていたと。


是枝:そうですね。坂元さんは「現場でどう変えていただいても構いません」と言ってくれたので、まったく手を入れてないわけではありませんが、今振り返ってみても、かなり完成度の高い脚本が撮影前に出来ていたと思います。


Q:編集で変更した箇所などはありますか?


是枝:撮って落としたシーンは結構あります。いちばん変わったのはラスト15分ですね。身内だけに観てもらう0号試写から、その1週間後の初号試写の間に、ラスト15分を大きく変えました。そこは最後の読後感につながっていく部分で、セリフ一つ落とすか残すかでずいぶん見え方が変わったので、慎重に時間をかけて編集し直しました。坂元さんにも両方観てもらいましたが、「こんなに編集で変わるんだ」とすごく喜んでくれました。




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