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『怪物』是枝裕和監督 現場での悩みが少ない、完成度の高い脚本でした【Director’s Interview Vol.319】

『怪物』是枝裕和監督 現場での悩みが少ない、完成度の高い脚本でした【Director’s Interview Vol.319】

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子役への演出法を変えた理由



Q:これまで是枝さんが書かれてきた脚本に比べて、今回は物語を牽引する力が強い印象がありました。それに合わせてこれまでとは演出を変えたところはありますか。


是枝:子供たちが演じるキャラクターは、今までやって来たアプローチでは届かない場所にある感情の表現が必要でした。それでも大きく何かを変えているわけではありません。ただ、今回は“ストーリー映画”だなというのは脚本を作りながら思っていたので、描写のディテールを積み重ねていくいつもの方法とは、やや違うと意識していました。僕の書く脚本は、基本的には“何かが起きた後”を描くことが多いのですが、今回は“何かが起きる前”を、我慢して、我慢して、引き伸ばしながら見せている。そこの持続力を損なわないために、どういう風にシーンを重ねていくかは考えましたね。



『怪物』©2023「怪物」製作委員会


Q:これまでの現場では子役には事前に脚本を渡さず、現場で口伝えで演出していたそうですが、今回は事前に脚本を渡したとのこと。子供たち自身も脚本を読んだ方がやりやすいということだったのでしょうか。


是枝:はい。即答でした(笑)。オーディションで(台本の有り無しで)両方やってもらって、「両方選べるけど、どっちがいい?」と二人に聞いたら、即答で「台本があった方がいいです」と。それで僕が(演出を)彼らに合わせる形を選びました。完成した作品を見て、その選択は間違えてなかったと思いましたね。おそらく今回は、その場でセリフだけ伝えて出来る内容ではなかった。そこはきちんと一段一段、階段を登ってようやくたどり着くところだったなと。二人はよくやったなと思います。


Q:今回の物語の概要やテーマは子供には少し難しそうですが、その辺も本人たちに説明されたのでしょうか。


是枝:役を演じる上での本読みやリハーサルもやりましたが、なるべく理解の助けになるようなアプローチを心掛けたくて、保健体育の先生に来てもらって、あの時期の男の子に起きる身体的な変化などについて授業してもらうところからスタートしました。




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