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『怪物』是枝裕和監督 現場での悩みが少ない、完成度の高い脚本でした【Director’s Interview Vol.319】

『怪物』是枝裕和監督 現場での悩みが少ない、完成度の高い脚本でした【Director’s Interview Vol.319】

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ロケハンで即決した小学校



Q:話が進むにつれて視点が変わっていきますが、撮影はどのように進められたのでしょうか。


是枝:視点を分けて撮ったり、同じ視点で撮ったりしましたが、そんなに厳密に分けて撮ってはいません。安藤サクラさんは自分が出るシーンしか脚本を読まず、あえて全体を分からなくて良いというスタンスで臨まれていました。多分出来上がるまでは全体を見ていないんじゃないかな。また、今回は登場人物がそれぞれの視界でしか物事を見ていないという理由から、視野をちょっと狭くするという意味も込めてシネスコサイズを選んでいます。


Q:シネスコサイズの話でいうと、撮影監督の近藤龍人さんが切り取るショットは全てが隙が無く素晴らしかったです。


是枝:近藤さんは生き生き伸び伸びと縦横無尽に動いてましたね。近藤さんは細かい色味も含めて、子供にどう寄り添うか、章毎にどう変えていくかを考えながら、設計図が緻密に出来ていた。『万引き家族』後は「舞妓さんちのまかないさん」(23 ドラマ)でご一緒して、大きなものではこれで3回目ですので基本はもうお任せでした。



『怪物』©2023「怪物」製作委員会


Q:ロケーションや美術も面白く、校舎のど真ん中にある階段や、裏庭の手形のモニュメント、電車の椅子が横並び(ロングシート)型ではなく、BOX(クロスシート)型になっているなど、それぞれがとても印象的でした。


是枝:あの小学校はお願いしてお借りした廃校でして、玄関ホールの真ん中の吹き抜けをロケハンで見て、「ここだ!」と思ったんです。ここに音楽が響くと思ったんです。裏庭のモニュメントは卒業生のタイムカプセルがあって時間の流れみたいなものを感じられる。ある種「生まれ変わり」というモチーフとしても使える。最初のロケハンで全部気に入って「もうここで」と思いましたね。


列車は美術のスタッフが0から作り上げたものですが、おっしゃる通りボックスシートの方が子供たち二人が向き合えるので、基本は向き合わせつつ横並びでも撮影できるよう、相談しながら決めました。




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