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『ナイト ミュージアム』誰もが楽しめるアイデアに、ハリウッドの“伝説”も刻印

(c)Photofest / Getty Images

『ナイト ミュージアム』誰もが楽しめるアイデアに、ハリウッドの“伝説”も刻印

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ミュージカル映画の歴史を作った2人の共演



 このようにキャストの持ち味を改めて認識させる『ナイト ミュージアム』だが、映画史に名を残すレジェンドの活躍こそ、本作の最大の功績かもしれない。ミッキー・ルーニーとディック・ヴァン・ダイクだ。博物館の警備員トリオを、もう一人のビル・コッブスとともに演じている。


 ルーニーは、1930年代から子役として活躍。同じく子役のジュディ・ガーランドとの名コンビで数多くのミュージカル映画に出演。その後も性格俳優として生涯で200本以上の映画を残した。オードリー・ヘップバーン主演の『ティファニーで朝食を』(61)では、主人公の隣人の日本人ユニオシを怪演。近年、取り沙汰される「当事者の俳優が演じるべき」という論調の際、アメリカ人が日本人を演じたという批判の象徴としてクローズアップされたりもした。ルーニーは1983年、アカデミー賞名誉賞を受賞。『ナイト ミュージアム』は、そのルーニーの晩年の代表作となり、同作のロサンゼルスでの取材では世界から集まったジャーナリストに、彼のパンフレットがプレゼントされた(そのような扱いは特例)。ただしルーニーは肝心のインタビュー取材では「疲れて眠いので」という理由で途中で帰ってしまったが…。『ナイト ミュージアム』公開時、ルーニーは86歳。8年後のシリーズ3作目『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』にもちらっと再登場したルーニーは、同作公開の2014年、93歳でこの世を去った。


 ミッキー・ルーニーのパンフレット(筆者提供)


 そしてもう一人のレジェンド、ディック・ヴァン・ダイクは、1960年代に自身の名を冠したTVコメディ番組「ザ・ディック・ヴァン・ダイク・ショー」で人気となり、煙突掃除が見せ場のバート役の『メリー・ポピンズ』(64)や、主演を務めた『チキ・チキ・バン・バン』(68)といったミュージカル映画で活躍。2018年の『 メリー・ポピンズ リターンズ』でも元気な姿を見せてくれた。1925年生まれのヴァン・ダイクは『ナイト ミュージアム』公開時は81歳。2025年の1月現在も存命中で、2024年の12月にカリフォルニア州マリブの山火事の際に、自宅に危機がおよび避難したというニュースも流れた。ルーニーとは対照的に、『ナイト ミュージアム』の取材時には彼は元気いっぱい。楽しそうにインタビューに答えていた。撮影時も、警備員トリオが階段でラリーの息子ニックを追いかけるシーンで、ヴァン・ダイクだけが自身でスタントをこなした。ビル・コッブス(公開時72歳。2024年に90歳で逝去)とルーニーがスタントマンに変わっていることは映像を凝視すればよくわかる。



『ナイト ミュージアム』(c)Photofest / Getty Images


 ミッキー・ルーニーとディック・ヴァン・ダイクはそれ以前にも共演の経験があるが、あらゆる世代が楽しめるハリウッドのブロックバスター作品に、伝説のスターの“いぶし銀”といえる存在感を刻印できたことで、『ナイト ミュージアム』の価値は大きく上がったと言いたい。


参考文献:「キネマ旬報」2008年2月下旬決算号



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。



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(c)Photofest / Getty Images

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