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『リアリティ・バイツ』苦くなりそうな現実も明るくポップに描き、ジェネレーションXを体現

(c)Photofest / Getty Images

『リアリティ・バイツ』苦くなりそうな現実も明るくポップに描き、ジェネレーションXを体現

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『リアリティ・バイツ』あらすじ

大学時代の友人であり、今も交友を続けているX世代の4人の若者たち。TV局に就職してドキュメンタリーを作ることを夢見るリレイナ。売れると思えないバンド活動を続け、職に就かないトロイ。トロイの友人で両親へのカムアウトという問題にぶつかるゲイのサミーと、リレイナの友人でGAPで働き、男性との経験が豊富なヴィッキー。そんな彼らがひょんな事から共同生活を始めるが……。


Index


19歳で書いた脚本に名プロデューサーが注目



 Z世代(=ジェネレーションZ)は日本でも流行語にもなった。厳密な基準はないが、だいたい1995年から2010年くらいまでに生まれた世代を指す(諸説あり)。Z世代というくらいだから、その前のY世代も存在した。しかし、1980年から1995年くらいに生まれた彼らはミレニアル世代と呼ばれるのが一般的だった。さらに遡って、その前のX世代(=ジェネレーションX)こそ、こうした呼び名の原点である。1960年代中頃から1970年代終わり頃までに生まれた世代。カナダの小説家、ダグラス・クープランドが1991年の著書で命名し、世界に広がった。


 X世代の特徴は「親の干渉を受けない自立心」、「アナログからデジタルへの移行を経験し、新しいことを受け入れやすい」、「誰かと過ごす時間を大切にする」、「コスパや機能性を重視」……など、いくつか挙げられるが、社会の大きな動きに飲み込まれず、それぞれの個性を重んじる世代というのが、しっくりくるような気がする。日本では青春時代にバブル期も経験した世代。そんなX世代を映画で体現していたのが、『リアリティ・バイツ』(94)だった。


『リアリティ・バイツ』予告


 映画の冒頭、大学の卒業式総代スピーチで、ウィノナ・ライダー演じるリレイナが、BMWを買うために週に80時間も働くという前世代の生き方に対し、自分たちはどう生きるべきかを一言で表現する。それは「わかりません」。なんとも開かれた答えだが、これこそX世代を代表する表現とも受け取れる。


 脚本家のヘレン・チャイルドレスは、1969年生まれ。まさにX世代のド真ん中。『リアリティ・バイツ』の基になる脚本を書き上げたのは、南カリフォルニア大学時代の19歳だったという。1991年、『再会の時』(83)や『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(88)などを手がけ、後に『パルプ・フィクション』(94)、『エリン・ブロコビッチ』(00)などを送り出すプロデューサーのマイケル・シャンバーグが、新たなスタイルの青春映画を作ろうと考え、チャイルドレスの脚本を発見する(当時は「ブルー・バイユー」というタイトルだった)。気に入ったシャンバーグは、チャイルドレスに直接会って、彼女の交友関係や日常の悩みを聞いて脚本家として採用することを決意。それから3年間かけてチャイルドレスは70にもおよぶパターンの草稿を作成した。


 やがてプロデューサーに俳優のダニー・デヴィートも参加。本格的に『リアリティ・バイツ』のプロジェクトが動き出し、監督がベン・スティラーに打診された。プロデューサーたちは、1989年から「サタデー・ナイト・ライブ」でのライター兼俳優としてのスティラーの活躍や、MTVで放映されていた「ベン・スティラー・ショー」で、その才能を評価したのだ。こうしてスティラーも監督として、チャイルドレスの脚本ディベロップに協力することになる。





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