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『リアリティ・バイツ』苦くなりそうな現実も明るくポップに描き、ジェネレーションXを体現

(c)Photofest / Getty Images

『リアリティ・バイツ』苦くなりそうな現実も明るくポップに描き、ジェネレーションXを体現

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音楽とセットで記憶される作品



 『リアリティ・バイツ』は、リレイナのテレビ局での挫折、彼女とトロイ、編成局長マイケルとの関係性を軸に展開されるが、ストーリーそのものよりも、登場人物それぞれのライフスタイルや心の機微、つまり全体のムードを楽しむ作品だろう。リレイナの卒業総代スピーチに続き、メインキャラクター4人がビルの屋上でグダグダと思いを語り合うオープニングクレジットに、そんな作品の魅力が凝縮されている。このシーンはリレイナがドキュメンタリーを撮っているという設定で、カメラを向けられた仲間のセリフから、X世代の特質や日常が伝わってくる。ここはチャイルドレスの脚本の真骨頂。MTVのマイケルも惹きつけるリレイナのこのドキュメンタリーと、それ以外の日常シーンがスムーズに行き来し、全体として登場人物たちの素顔が浮かび上がっていく作りが絶妙。そしてエイズの感染への恐れや、やたら吸いまくるタバコ、大きめの携帯電話など、具体的な描写によって1994年という時代が象徴される。


 こうした日常描写、何気ないやりとりが映画の魅力となるうえで、重要なのが音楽との相性。作品を観た人は『リアリティ・バイツ』が曲とセットで記憶されることになる。そのひとつが、「マイ・シャローナ」。ガソリンスタンドのフードマート(コンビニ)で、この曲がラジオから流れ、リレイナたち4人が踊り出す(トロイだけは静観)。ザ・ナックの「マイ・シャローナ」は1979年の大ヒット曲で、そのビートやリズムの強烈さ、パワフルなヴォーカルで一度聴いたら忘れないインパクト。現在に至るまで映画やCMなどでたびたび使われているが、「マイ・シャローナ」といえば『リアリティ・バイツ』と結びつける人も多い。本作と同じ1994年の『パルプ・フィクション』でもクエンティン・タランティーノが拷問シーンで「マイ・シャローナ」を使おうとしたものの、『リアリティ・バイツ』に先を越されて諦めたのは有名な話。



『リアリティ・バイツ』(c)Photofest / Getty Images


 そして、リレイナとマイケルが車の中でキスしているところをトロイが目撃するシーンで流れる「Baby, I Love You Way(君を求めて)」。本編で使われたのは1975年のピーター・フランプトンのオリジナル版だが、サウンドトラックのアルバムには、レゲエポップバンドのビッグ・マウンテンによるカバーを収録。『リアリティ・バイツ』によってオリジナル版をしのぐ名曲として愛されるようになる。曲の誕生は1975年で、新たなバージョンとして一歩を踏み出したのが1994年ということで、X世代の人生ともシンクロする。


 他にも印象に残る楽曲はあるが、主題歌的に扱われたのが、リサ・ローブの「ステイ/Stay(I Missed You)」。ローブがイーサン・ホークの友人だったことから使われたのだが、実際にこの曲が流れるのはエンドクレジット(しかも2曲目)。それにもかかわらずプロモーションなどでこの「ステイ」がフィーチャーされ、ビルボードのシングルチャート1位を達成する。当時、リサ・ローブはレコード会社と未契約。その状況での1位は史上初のケースだった。「マイ・シャローナ」も「ステイ」も、シーンとともに記憶されるというより、作品のムードにリンクした成功例だろう。





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