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『TATAMI』モノクロームの中、自由と尊厳を求める魂がスパークする

© 2023 JUDO PRODUCTION LLC. ALL RIGHTS RESERVED

『TATAMI』モノクロームの中、自由と尊厳を求める魂がスパークする

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モノクロームで描写される葛藤



 世の中に情報過多な映画があふれる一方、本作『TATAMI』(23)が描き出すものはシンプルにして究極だ。何よりも色を削ぎ落とし、白黒で貫かれたビジョンにて全てを伝えようとする手法には舌を巻く。モノクロームだからこそ、いくつもの柔道の試合シーンを迫力満点に描くことを可能とし、試合会場をさながら心理迷宮のごとき「限定空間」として浮かび上がらせた。


 『TATAMI』というタイトルから、外国人監督がジャパニーズカルチャーを描いた奇妙奇天烈な作品を想像することなかれ。これは一人のイラン人女性柔道選手が、大会中に自国の政府から圧力を受け「出場か、棄権か」を巡って苦悩する物語だ。


 柔道を題材にしている点を強調するのなら、もっとわかりやすく『JUDO』でも良かったのかもしれない。しかし本作を鑑賞していくと、競技そのものではなく、むしろ「選手たちが立つその場」にこそ意味があることがわかってくる。



『TATAMI』© 2023 JUDO PRODUCTION LLC. ALL RIGHTS RESERVED



圧力に従うか、抗うか



 舞台はジョージアの首都トビリシで開催される柔道の世界選手権。イランの現役女子選手のレイラ(アリエンヌ・マンディ)は、過去に選手として輝かしい戦歴を残したコーチのマルヤム(ザーラ・アミール)とともに会場入りし、二人三脚で、試合を一つまた一つと乗り越えていく。


 そんな矢先、自国の柔道連盟からの一本の電話が運命を変える。連盟の言い分はこうだ。このまま勝ち進めば国家同士が敵対するイスラエルの選手と対戦することになる。その事態はどうしても避けねばならない。よって、怪我を理由に試合を棄権せよ。これは政府からの命令だーーというのだ。レイラが要求を阻むとその口調は徐々に強まる。挙げ句の果てには、国内で拘束した家族の身の安全を引き合いに出して、棄権を迫り…。





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