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『Flow』黒猫が“他者”を受け入れるまでの冒険

©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

『Flow』黒猫が“他者”を受け入れるまでの冒険

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『Flow』あらすじ

世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとする中、ある一匹の猫は居場所を後に旅立つ事を決意する。流れて来たボートに乗り合わせた動物たちと、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。しかし、彼らの中で少しずつ友情が芽生えはじめ、たくましくなっていく。彼らは運命を変える事が出来るのか?そして、この冒険の果てにあるものとは―?


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ラトビアに栄冠をもたらした若き才能



 3月2日(日本時間3日)に行われた、第97回アカデミー賞授賞式。メガヒット作『インサイド・ヘッド2』(24)、ドリームワークス制作の『野生の島のロズ』(24)、クレイアニメーションの『かたつむりのメモワール』(24)、人気シリーズの新作『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』(24)といったノミネート作品が並ぶなか、アカデミー長編アニメ映画賞に輝いたのは、ギンツ・ジルバロディス監督の長編2作目となる『Flow』(24)だった。


 本作は、一匹の黒猫が大洪水に包まれた世界で生き抜いていく物語。人間はいっさい登場しない。だからセリフはなく、ナレーションもなく、なぜ洪水が起きたのかの説明もない。過去なのか、現在なのか、未来なのか、時制も不明。ひょっとしたら、地球によく似た別の惑星での出来事かもしれない。余計なものを削ぎ落とすことで、アニメーションとしてダイナミズムに純化した作品が誕生した。


 「この映画を温かく受け止めていただいたことに本当に感動しています。これを機に、世界中のインディペンデントアニメーション映画作家たちに門戸が開かれることを願っています。ラトビア映画にとって初めての機会であり、私たちにとって本当に大きな意味があります」(*1)


 と、ジルバロディスは壇上で喜びのスピーチ。第82回ゴールデングローブ賞でアニメーション映画賞、第52回アニー賞で長編インディペンデント作品賞&脚本賞、アヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞に輝いた本作に、新たな勲章が加わった。



『Flow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.


 ギンツ・ジルバロディスは1994年生まれ(大谷翔平と同世代である)。なんと8歳のときからアニメを作り始め、16歳で短編『Rush』(10)を完成させ、25歳のとき長編映画『Away』(19)を発表。アヌシー国際アニメーション映画祭でコントルシャン賞を受賞するほか、世界中の映画祭で9冠を達成した。そして今回の『Flow』で、インディペンデント映画として初となるアカデミー長編アニメ映画賞を受賞。ラトビア出身の若者が、猛スピードでトップ・クリエイターへと駆け抜けていった。


 ちなみに本作は、SF超大作『アバター』シリーズを凌ぎ、母国ラトビアで過去最高の興行収入を記録。「僕たちはジェームズ・キャメロンに勝ったんだよ」(*2)と、ビデオインタビューでジルバロディスは照れながら微笑んだ。





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