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『Away』孤独と向き合い、孤独を見つめた、私小説的アドベンチャー

©2019 DREAM WELL STUDIO. All Rights Reserved.

『Away』孤独と向き合い、孤独を見つめた、私小説的アドベンチャー

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『Away』あらすじ

飛行機事故でたった一人生きのびた少年は、森で地図を見つけ、オートバイで島を駆け抜ける。<黒い影>から逃れて、小鳥とともに。


Index


たったひとり、3年半の歳月をかけて創り上げたインディーズ・ムービー



 今や、アニメーション製作に費やされるバジェットは増大の一途をたどり、投入される人員もますます肥大化している。約16億9,800万ドルという、アニメーション映画として当時歴代最高の興行収入を叩き出した『インサイド・ヘッド2』(24)の制作費は、およそ2億ドル。映画サイトIMDBでキャスト&スタッフの欄をクリックしてみると、800人近いクルーの名前がズラリと並ぶ。(*1)


 アウトラインを決めるためのブリーフィングが繰り返され(ディベロップメント)、複数のライターによってシナリオが作られ(ストーリー)、チーム内で絵コンテを共有し(エディトリアル)、キャラクターやセットをデザインし(プロダクション)、レイアウトやらライティングやらの作業を経て、ようやくひとつの作品が出来上がる。世界最高峰のアニメーション制作会社ピクサーともなれば、その規模はあまりにも巨大だ。


 その一方で、テクノロジーの発達はパーソナルなアニメ制作も可能にした。1994年生まれ、ラトビア出身のギンツ・ジルバロディスは、デスクトップの上で独自の世界を創り出してきた若き才能。無から有を生み出すアニメーションの世界は、彼の想像の翼を大きくはためかせた。



『Away』©2019 DREAM WELL STUDIO. All Rights Reserved.


「10代の頃、 映画制作全般に興味がありました。 でも予算も技術もないので、自分の作りたい映画を作るのはすごく難しそうだと思いました。それに当時の私は内気で自信もなかったので、大きなチームで仕事をしたり人に指示を出したりするのは、自分に向いていない気がしました。でもアニメーション映画なら、 自分ひとりで、自分のペースで、好きなように作れると知ったのです」(*2)


 8歳のときからアニメを作り始めたという彼は、YouTubeにアップされたチュートリアルを見てCG技術を独学し、16歳のときに短編『Rush』(10)を発表。その後も、『Aqua』(12)、『Priorities』(14)、『Followers』(14)、『Inaudible』(15)、『Oasis』(17)と、意欲的に作品を作り続けてきた。そして、満を持して初の長編映画に挑戦。パラシュートで不時着した青年が、バイクで不思議な島を横断する75分のアドベンチャー映画…『Away』(19)を完成させる。


 本作は、アヌシー国際アニメーション映画祭でコントルシャン賞を受賞したほか、アカデミー賞長編アニメーション部門の最終候補32作品にも選出されるなど、世界中の映画祭で9冠を達成。25歳の若者が、たったひとり、3年半もの歳月をかけて魂を込めたインディーズ・ムービーが、世界から絶賛を浴びたのである。



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