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『HERE 時を超えて』時空を超越し群像劇を紡ぐ、“ここ”というアングル
2025.04.09
ゼメキス作品としての共通性
もちろん、ロバート・ゼメキスが築き上げてきた作品としての共通性も感じられる。代表的なことを3つ挙げると、まずひときわ強く感じるのが「時空を超越すること」へのこだわりだ。かつて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズではデロリアンを通じてダイナミックに成し遂げられたことが、本作ではタイムマシンすら使わず「ここ」という概念ひとつで成し遂げられている。
二つ目として浮かぶのは「異なる映像を重ね合わせる」という面での経験値の高さだ。特殊効果がSFXと呼ばれていた時代もさることながら、ゼメキスは『ロジャー・ラビット』(88)でのアニメと実写の融合、『フォレスト・ガンプ』での歴史的な記録映像とトム・ハンクスの融合など、数々の映像革命をやってのけてきた。本作でもテクノロジーによって登場人物が若返りするなどのマジカルな描写がいくつも刻まれている。
『HERE 時を超えて』©2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.
また、この「重ねる」という観点で長編デビュー作『抱きしめたい』(78)にまで遡ると、実に面白い手法に行き着く。
ビートルズ到来で湧き上がるアメリカの姿を描いたこの狂騒コメディで、この大旋風の中心である4人の姿は遠景にぼんやりと描かれ、クローズアップされた明瞭な姿はその場に設置してあるモニターやTVカメラ越しに、当時の記録映像を用いて映し出されるのだ。SFXを加味せずとも、当時からとてもシンプルな手法で映像を効果的に重ねることよって面白い臨場感を生み出しているのである。
いわばキャリアを通じてこのような試みを貫いてきたゼメキスだからこそ、本作では、別々の時代の映像を重ね合わせて「ここ」を紡ぐという難易度の高いことを、力むことなくごくナチュラルな語り口でやってのけられたのではないだろうか。