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『HERE 時を超えて』時空を超越し群像劇を紡ぐ、“ここ”というアングル

©2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

『HERE 時を超えて』時空を超越し群像劇を紡ぐ、“ここ”というアングル

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 ロバート・ゼメキスといえば、学生時代にスピルバーグに才能を認められ、20代のうちに早くも商業長編監督デビューを飾り、30代でSF映画の金字塔『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)を世に放ち、40代では『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)でオスカー受賞を果たすなど、もはや映画人として完成された人生を歩んできた人物だ。


 ならば、70代に達した彼はいま、何を見つめるのか。正直いうと私の興味はただこの一点に絞られていた。それはある意味、映画の達人に人生の境地を訊くようなものであり、たとえどんな答えが返ったとしても、それだけで貴重で、尊い。


 かくなる気持ちがあったせいか、ゼメキスが失敗を恐れずに挑んだシンプルでいて壮大、ワンアイデアで時空を貫くこの映画装置に、私はちょっと感動すら覚えてしまった。



『HERE 時を超えて』©2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.



『HERE 時を超えて』あらすじ

恐竜たちが駆け抜け、氷河期を迎え、オークの木が育ち、先住民族の男女が出会う。悠久の時を越えてその場所に家が建ち、いくつもの家族が入居しては出てゆく。1945年、戦地から帰還したアル(ポール・ベタニー)と妻のローズ(ケリー・ライリー)がその家を購入し、やがてリチャード(トム・ハンクス)が生まれる。高校生となったリチャードは絵が得意でアーティストになることを夢見ていた。そんな中、別の高校に通うマーガレット(ロビン・ライト)と出会い、2人は恋におちる。マーガレットは、高校卒業後は大学に進学し、弁護士になることを目指していた。だが、ここから思いがけない人生が始まる──。


Index


「ここ」で起こった出来事を紡ぐ



 物語はまさかの先史時代から始まる。恐竜が駆け回り、火山が噴火し、やがて氷河期がやってくる。当時から「ここ」、すなわち固定化されたアングルは存在した。そのままこの四角い枠組は一切変わらぬまま、時だけが移ろっていく。やがて出現した人類はいくつも世代を重ね、いつしか道が敷かれ、街ができ、家が建つ・・・・・・。


 そこでは基本、ワンシチュエーションの舞台劇のようにノンストップのドラマが展開する。そして時折、映像の一部がパネルのように別時代の様子を覗かせ、それらがスクリーンを侵食するような形で別の時代へと場面転換する。もちろん場所は「ここ」のまま。同じアングルで、時間だけが行き来し、かつてここで暮らした無数の人々の生活が、群像劇風に描かれていくのである。



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