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『カップルズ』まるで“エドワード・ヤン・ユニバース”、その関連性を堪能する

© Kailidoscope Pictures

『カップルズ』まるで“エドワード・ヤン・ユニバース”、その関連性を堪能する

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『牯嶺街少年殺人事件』と『エドワード・ヤンの恋愛時代』から引き継ぎ発展させたものとは?



 では、『カップルズ』はエドワード・ヤン監督のフィルモグラフィーにおいてどういった位置にあるのか。まず押さえておきたいのは、『エドワード・ヤンの恋愛時代』と『ヤンヤン 夏の想い出』に挟まれた「新台北3部作」の第2作に当たるということ。


 エドワード・ヤンは長編監督デビュー作の『海辺の一日』(83)から、基本的に現在進行形で同時代の台北の都市をメインに描き続けた作家だ。過去の歴史に大きく遡ったのは1960年(前後)を舞台にした『牯嶺街少年殺人事件』だけ。ただし『台北ストーリー』や『恐怖分子』の頃は、まだ「白色テロ」と呼ばれた戒厳令の時代(1947年の二・二八事件から1987年に戒厳令が解除されるまでの期間を指す)。1988年には李登輝が中華民国総統、並びに中国国民党主席に就任し、新たなリーダーのもと台湾が急激に経済発展を遂げる。



『カップルズ』© Kailidoscope Pictures


 この李登輝時代の様相こそが、『エドワード・ヤンの恋愛時代』から描かれ始める「新台北」の姿だ。特に『カップルズ』が公開された1996年は、アジア通貨危機や中台関係の悪化に差し掛かる以前のバブル経済末期であり、例えばウォン・カーウァイ監督が『恋する惑星』(94)や『天使の涙』(95)で描いた、同時期の香港にも負けない煌びやかでグローバルな“台北CITY”の活気が映し出されている。


 そしてもうひとつ押さえたいのが、『カップルズ』は『牯嶺街少年殺人事件』の続編的性格を持っていること。実は主要キャストが重なっており、『牯嶺街少年殺人事件』から5年経って成長した3人の少年が『カップルズ』にも出演している。主人公のシャオスー役だったチャン・チェン(1976年生まれ)は、美容師のホンコン役(このネーミングからも、当時の中国返還前の香港がいかにクールなイメージであったかよく判る)。フェイジー役だったクー・ユールン(1977年生まれ)が、純情なルンルン役。“リトル・プレスリー”ことワンマオ役だったワン・チーザン(1977年生まれ)が、“リトル・ブッダ”ことトゥースペイスト役。ここにタン・ツォンシェン(1970年生まれ)演じるレッドフィッシュ役も加えた4人組の不良少年たちが、自分たちのアジトでたむろしつつ夜の遊び場を徘徊する。『牯嶺街少年殺人事件』でスクリーンデビューしたチャン・チェンは、このあと『ブエノスアイレス』(97/監督:ウォン・カーウァイ)や『グリーン・デスティニー』(00/監督:アン・リー)で大役を演じ、最近では『DUNE/デューン 砂の惑星』(21/監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ)にウェリントン・ユエ医師役で出演するなど、アジアを代表するスター俳優になっていくのは周知の通り。




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