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『8人の女たち』フランソワ・オゾンと豪華スターが紡いだ、50年代美意識とマイノリティ

(c)Photofest / Getty Images

『8人の女たち』フランソワ・オゾンと豪華スターが紡いだ、50年代美意識とマイノリティ

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シャンソン「幸せな愛はない」の意味



 予想外な展開や唐突な悲劇が描かれ、本作の物語は急転直下のクライマックスを迎えることとなる。このショッキングな出来事を受けて、ルイ・アラゴンの詩をシャンソンにした「幸せな愛はない」をダニエル・ダリューが歌い、女たちはゆるやかにダンスをする。この絶望的な歌詞は、第二次大戦時、南仏でイタリア軍の侵攻に対するレジスタンス活動をしていたアラゴン夫妻の心情が託されているといわれる。


 悲観的な雰囲気を含みながら、祖国を侵略する暴力への抵抗の意志が込められた歌……。それは、本作における女性たちの悲劇と、多くの女性が男性に翻弄されてきた歴史を踏まえた、女性であるからこその共感と連帯に至る物語の流れに、根源的に共鳴しているところがあるのではないか。女たちが一列に並んだあと、手を繋ぐラストシーンは、ドヌーヴのアイデアだったのだという。



『8人の女たち』(c)Photofest / Getty Images


 大物俳優ばかりの現場では、互いに仲が悪くギスギスした雰囲気で撮影が進行したと想像した観客が多かったようだが、オゾン監督によると、現場は独特の緊張感が漂いながらも、友好的で和やかな雰囲気だったらしい。


 フィルミーヌ・リシャール演じるメイドが倒れ、その周りを女たちが囲むシーンでは、下からの角度で俳優たちを撮ることになった。二重あごを撮られることを嫌った俳優たちは、お互いの首まわりをぱちぱちと叩いて、たるまないように気をつけて撮影に臨んだのだという。この微笑ましい仕草は、現実の彼女たちの連帯と共感を示す逸話である。



文:小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter:@kmovie



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(c)Photofest / Getty Images

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