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『ぼくの伯父さん』ジャック・タチとチャップリン、重なるテーマと異なるアプローチ

(c)Photofest / Getty Images

『ぼくの伯父さん』ジャック・タチとチャップリン、重なるテーマと異なるアプローチ

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いまも愛される伝説的作品



 映画史を語る上で避けては通れない“異才”の一人、ジャック・タチ。フランスを代表するマルチタレントなコメディアン、俳優であり、傑出した映像センスを活かした先鋭的な作品を遺した映画監督でもあった。


 彼が監督、脚本、主演を務めた『ぼくの伯父さん』(58)は、その充実した作品群のなかでも最も評価され、いまも愛される伝説的作品である。ここでは、そんな本作『ぼくの伯父さん』の内容や背景を振り返りながら、現在の目から新たな評価をしていきたい。


 本作を含めて複数の監督作でタチ自身が演じているのは、コートと帽子、パイプがトレードマークのキャラクター、「ユロ氏」。要領が悪く損ばかりしているが、ユーモアや優しさに溢れた愛すべき人物である。劇中でユロ氏はほとんど言葉を発することはなく、パントマイム風の身体表現で観客を笑わせてくれる。また、周囲の登場人物も言語で状況を必要以上に説明しないのは、サイレント映画を想起させるクラシックなスタイルだといえる。



『ぼくの伯父さん』(c)Photofest / Getty Images


 ユロ氏は、街のさびれた郊外にある、ユニークだが質素なアパルトマンに住んでいて、妹の子どもである9歳の甥ジェラールを学校からアルペル邸に送り届けるのが日課となっている。工場の管理職を務める、ジェラールの父にしてユロ氏の義弟であるアルペル氏は、会社では従業員に恐れられているものの、息子のジェラールが伯父さんにばかり懐いているのが気に食わない。ユロ氏は社会的地位こそないが、子どもたちや小鳥、近所の人々への思いやりに溢れているのだ。


 対してアルペル夫妻は、バウハウスの機能美と全面コンクリートのブルータリズム的外観、余計なものを排除するミニマリズムが徹底されたウルトラモダンな邸宅が象徴するように、どれだけ合理的、効率的に暮らせるかということを信条にしている。まさに、「合理の鬼」といったところだ。




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