1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ONCE ダブリンの街角で
  4. 『ONCE ダブリンの街角で』ギターボーイ meets フーバーガール
『ONCE ダブリンの街角で』ギターボーイ meets フーバーガール

(c) 2007 Samson Films Ltd. And Summit Entertainment N.V. All Rights Reserved.

『ONCE ダブリンの街角で』ギターボーイ meets フーバーガール

PAGES


「僕のボガートとバコール」



 主人公を演じるグレン・ハンサードは、アイルランドの人気ロックバンド「ザ・フレイムス」のフロントマンであり、監督のジョン・カーニーはそのベーシスト。2人は、バンド時代にコメディ映画を何本か一緒に作ったくらい、気心の知れた仲だった。バンドのライブ映像やPVの監督を務めていたジョン・カーニーは、やがて本格的に映像の世界へと進出。数多くの映画やテレビ番組を制作し、満を持して『ONCE ダブリンの街角で』の制作に取り組む。


 「ミュージシャンであること、そして音楽が好きであることから生まれたアイデアなんだ。映画を見ていると、台詞よりも音楽に反応してしまう。若いころは、監督が音楽を書いているとばかり思っていて、例えばヒッチコック映画の音楽にはいつも圧倒されていたよ。一日中、仕事の代わりに音楽をダウンロードしていたものさ。だから、どうすればそれを仕事に変えることができるか、考え始めたんだ」(*1)


 当初は、同じアイルランド出身の俳優キリアン・マーフィーが、ギターボーイを演じるはずだった。グレン・ハンサードはアラン・パーカー監督の『ザ・コミットメンツ』(91)に出演したことはあったが、自分の素人芝居にすっかり懲りていた。この映画では作曲に専念するはずが、ジョン・カーニーに説得されて出演することに。



『ONCE ダブリンの街角で』(c) 2007 Samson Films Ltd. And Summit Entertainment N.V. All Rights Reserved.


 フーバーガールを演じるマルケタ・イルグロヴァも、チェコ出身の女性シンガー・ソングライター。ザ・フレイムスがチェコスロバキアでツアーをしていたときにグレン・ハンサードと出会い、交流をあたためていた。もちろん、彼女も演技の経験はない。だがジョン・カーニーは彼女こそが求めていた人材だと確信し、映画に抜擢する。2人の男女がダブリンの街角で出会い、音楽を通してコミュニケーションする物語なのだから、演じるのもミュージシャンが良いと考えたのだ。


 もちろん脚本は用意されていたものの、この映画はアドリブの比重がとても高いものとなった。グレン・ハンサードは「2人とも演技の経験がなかった。ギターを弾くのは問題ないけれど、台詞があるときはいつもボロボロだったよ」と述懐し、マルケタ・イルグロヴァも「台本に書かれたセリフは、言葉の問題でとても難しかった」と答えている(*2)。2人は、自然に口をついて出てくる自発的な言葉で、ギターボーイとフーバーガールを演じた。


 撮影3日目くらいから、ジョン・カーニーは2人を「僕のボガートとバコール」と呼んでからかっていたという。ハンフリー・ボガートとローレン・バコールはハワード・ホークス監督の『脱出』(44)で共演し、やがて撮影現場で恋に落ちる。ハワード・ホークスはこれを絶好の機会と捉え、2人の間に生まれた化学反応を可能な限りスクリーンに映し出そうと試みた。ボガート、バコール、ホークスの関係を自分たちに置き換えた発言だったのである。


 そして、監督の予言通り、グレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァは本作をきっかけに恋に落ちた。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ONCE ダブリンの街角で
  4. 『ONCE ダブリンの街角で』ギターボーイ meets フーバーガール