2025.08.19
北米を中心に海外にも広がり続ける『リンダ リンダ リンダ』人気
さらに海外での『リンダ リンダ リンダ』は如何なるものか。そもそもアメリカのオルタナティヴシーンを代表するロックバンド、スマッシング・パンプキンズのギタリストとして知られる日系2世のジェームズ・イハが音楽(劇伴)を担当していることもあるのだろうか、北米での認知度はかなり高い。2005年9月にカナダのトロント国際映画祭で上映された時から話題を集め、また本作の影響を受けたアジア系とラテン系のメンバーからなる4人組のガールズバンド、The Linda Lindas(ザ・リンダ・リンダズ)が米ロサンゼルスで2018年に結成。年齢は2004年~2010年生まれと若く、『リンダ リンダ リンダ』が世代も国籍も超えて人気を博している証左のシンボルと言える。
2022年8月のサマーソニックでは東京 (幕張メッセ/ZOZOマリンスタジアム) と大阪 (舞洲SONIC PARK) の両会場に出演。「リンダ リンダ」をパワフルに演奏したことも記憶に新しい(You Tube動画などでも確認できるので未見の方はぜひ)。しかも8月20日の東京の同じステージにはザ・ブルーハーツの甲本ヒロトと真島昌利を有する、ザ・クロマニヨンズも出演していた!
『リンダ リンダ リンダ 4K』© 「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ
今回の4Kデジタルリマスター版も、2025年6月にニューヨークのトライベッカ映画祭でワールドプレミア上映され、同6月には続いて上海国際映画祭にてアジア・プレミア上映。9月からはアメリカでの劇場公開も決定している。歳月を重ねるたびに『リンダ リンダ リンダ』の稀有な輝きはますます広がりを増し、世界のニュースタンダードとして定着する日も遠くはないだろう。
また2024年に山下敦弘監督は、夏休み中の水のないプールを舞台に女子高生4人組の想いが交錯する様を描いた新作『水深ゼロメートルから』を発表。これは紛れもなく『リンダ リンダ リンダ』に連なる情感と情景を、フレッシュに蘇らせた青春映画の快作だった。そしてこの二作を通じて認められるのが、相米慎二監督の『台風クラブ』(85)からの影響だ。約20年を挟んだ相米から山下へ――こういったコンテクストでも語れることはたくさんある。『リンダ リンダ リンダ』をめぐるお喋りはまだまだ尽きることがないのである。
映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「シネマトゥデイ」「Numero.jp」「Safari Online」などで定期的に執筆中。YouTubeチャンネル「活弁シネマ倶楽部」でMC担当。
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『リンダ リンダ リンダ 4K』
8月22日(金)より、新宿ピカデリー、渋谷シネクイントほか、全国ロードショー
配給:ビターズ・エンド
© 「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ