2025.08.19
『リンダ リンダ リンダ』あらすじ
⽂化祭前⽇に突如バンドを組んだ⼥⼦⾼⽣たち。コピーするのはブルーハーツ。ボーカルは韓国からの留学⽣!本番まであと3⽇。4⼈の寄り道だらけの猛練習が始まった!
Index
- 伝説の劇中ガールズバンド「ザ・パーランマウム」を生んだ、ゼロ年代屈指の名作が待望の4Kリバイバル!
- 『リンダ リンダ リンダ』⇒『けいおん!』という影響の回路
- 「日常系」の原型としての『リンダ リンダ リンダ』が行ったロックミュージックの再定義
- 北米を中心に海外にも広がり続ける『リンダ リンダ リンダ』人気
伝説の劇中ガールズバンド「ザ・パーランマウム」を生んだ、ゼロ年代屈指の名作が待望の4Kリバイバル!
あなたは伝説のガールズバンド、「ザ・パーランマウム」を知っているか? とある地方都市にある芝崎高校に通っていた軽音楽部に所属する3人の女子生徒――ギターの立花恵、ベースの白河望、ドラムの山田響子が、成り行きだけで日本語のおぼつかない韓国人留学生のソンをヴォーカルに迎えた。彼女たちがステージに上がったのはわずか1回。2004年の文化祭「芝高ひいらぎ祭」の最終日だけだ。
……などと仰々しく書き出してみたが、「ザ・パーランマウム」の正体は、2005年の夏に初公開された映画『リンダ リンダ リンダ』の劇中バンド。ザ・ブルーハーツのコピーバンドだ。パーランマウムとは韓国語で「青い心」(ブルーハーツ)の意味。フィクション上の設定だが、まるで実在したバンドかのような人気を誇っている。何よりメンバー=キャストが凄い。まずヴォーカルの留学生ソンを演じたのは、ペ・ドゥナ(1979年生まれ)。これはポン・ジュノ監督の『ほえる犬は噛まない』(00)を観て彼女にベタ惚れしていた当時28歳の山下敦弘監督(1976年生まれ)がごり推ししたもので、当初ヴォーカルの役は留学生という設定ではなかったそうだ。ギターの立花恵役は、映画デビューしたばかりの香椎由宇(1987年生まれ)。実年齢としては最年少で、本作により第29回山路ふみ子映画賞新人女優賞を獲得。ドラムの山田響子役には、子役から活躍する前田亜季(1985年生まれ)。そしてベースの白河望役にはまだメジャーデビュー前だったロックバンド「Base Ball Bear」の関根史織(1985年生まれ)が抜擢された。
『リンダ リンダ リンダ 4K』© 「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ
この4人のキャラクターバランスが掛け値なしに素晴らしい。各々バラバラの個性として屹立しつつ、全員並ぶとそれが柔らかく溶け合って、不思議な一体感を醸し出すのだ。ちなみにロケーションは群馬県の高崎市と前橋市がメイン。芝崎高校の撮影に使われたのは前橋工業高校だった。また新進時代の松山ケンイチや、現在は主にプロデューサー・監督として活躍する小林且弥が男性生徒役として強い印象を残すほか、文化祭のステージにはシンガーソングライターの湯川潮音やロックバンド「ME-ISM」の山崎優子も立つ。またザ・ブルーハーツのフロントマンである甲本ヒロトの実弟、甲本雅裕が先生役で出演しているのもニクい。
そして公開から20周年――。この名作『リンダ リンダ リンダ』が4Kデジタルリマスター版として、2025年8月22日(金)よりリバイバル公開される。今回宣伝コピーに使用されている「ゼロ年代を代表する青春映画の金字塔」というフレーズは、まったくもって偽りなし。奇跡のような時間をフレッシュなまま永久保存した、瑞々しい輝きの永遠性もさることながら、ひとつの定型を“発明”した21世紀のスタンダードとして、後続への影響力が半端ではないのだ。日本の青春映画、というより青春の風景をめぐる「物語」の形は、『リンダ リンダ リンダ』以前と以後で決定的に変わった、とまで言っても決して大げさではないほどである。