1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 赤ちゃんはトップレディがお好き
  4. 『赤ちゃんはトップレディがお好き』の贅沢な中身は、コメディエンヌ、ダイアン・キートンの魅力が炸裂!
『赤ちゃんはトップレディがお好き』の贅沢な中身は、コメディエンヌ、ダイアン・キートンの魅力が炸裂!

(c)Photofest / Getty Images

『赤ちゃんはトップレディがお好き』の贅沢な中身は、コメディエンヌ、ダイアン・キートンの魅力が炸裂!

PAGES


古き良きスクリューボール・コメディの復活



 マイヤーズが目指したのは、ハリウッドの黄金期に大量生産され、映画ファンに愛されたスクリューボール*・コメディだった。また、彼女が終始こだわったのは、私生活と仕事の間で葛藤する女性にフォーカスし、女性の視点を通して男性を再定義すること。この理念に則り、キートンとは『花嫁のパパ』シリーズ3作(91,95,20)と、『恋愛適齢期』(03)をヒットさせた(北米で興収が1億ドルを突破)。また、マイヤーズは、メリル・ストリープ主演で『恋するベーカリー』(09)や、アン・ハサウェイ扮する起業家がロバート・デ・ニーロ演じるシニアインターンと性差と年齢差を超えた信頼で結ばれていく『マイ・インターン』(15)を発表している。


*クリケットや野球の用語でスピンがかかって予測がつかないボールのこと



『赤ちゃんはトップレディがお好き』(c)Photofest / Getty Images



ダイアン・キートンを亡くしたハリウッドのこれから



 マイヤーズとキートンの関係性は、単に作り手と主演俳優に収まらない、運命共同体に近いものがあると感じる。キートンが『恋愛適齢期』で第61回ゴールデングローブ賞ミュージカル/コメディ部門の主演女優賞を受賞した時、壇上に上がった彼女が(用意したメモ用紙を引きちぎるほど!)大声で叫んだのはマイヤーズの名前だった。また、キートンが2025年10月11日、79歳でこの世を去った時、マイヤーズはこんな追悼文をメディアに寄せている。


 彼女は私たちと物語を紡ぐために、幾度となく自らをさらけ出してくれました。彼女に任せれば大丈夫だと安心して、私はより良い脚本を書くことができたのです。



 マイヤーズの言葉は、ウディ・アレンの追悼文の中の一節、「いつしか自分はダイアンに気に入ってもらいたくて映画を作っていた気がする」という言葉とリンクする。ダイアン・キートンはそんな存在だったのだ。彼女が旅立ったことで、アレンは「この世界が少しだけ寂しくなるかもしれない」とも言ったけれど、果たしてそうだろうか? 確かに世界は少し寂しくなるだけかもしれないけれど、世界中のロマコメファンが感じている喪失感、そして、そのジャンルの中心に長年居続けたダイアン・キートンを亡くした悲しみは、意外に深い気がする。



文:清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。現在、映画com、MOVIE WALKER PRESS、Safariオンラインにレビューやコラムを執筆。また、Yahoo!ニュース個人にブログをアップ。劇場用パンフレットにもレビューを執筆。著書に『オードリーに学ぶおしゃれ練習帳』(近代映画社刊)、監修として『オードリー・ヘプバーンという生き方』『オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120』(共に宝島社刊)。



今すぐ観る


作品情報を見る



(c)Photofest / Getty Images

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 赤ちゃんはトップレディがお好き
  4. 『赤ちゃんはトップレディがお好き』の贅沢な中身は、コメディエンヌ、ダイアン・キートンの魅力が炸裂!