© 2024 Millers Point Film LLC. All rights reserved.
『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』終焉から見えてくる“いまこの瞬間”の輝きを抱きしめる
2025.11.27
物語重視ではなく、空気や雰囲気を活写する
もしあなたが、オムネス・フィルムズ作品『さよならはスローボールで』(24)を鑑賞済みならば、本作が何を描こうとしているかは手にとるようにわかるはず。構成メンバーがゆるやかに繋がって互いのプロジェクトに参加し合うオムネス・フィルムズでは、作品を通じて「物語よりも雰囲気や空気感を重視し、21世紀における様々な文化的衰退の形を探究する」という独自の方針を掲げている。
カーソン・ランド監督作『さよならはスローボールで』が取り壊しの決まった球場での最後の草野球を描いたのと同じく、本作『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』で描かれる対象は、タイラー・タオルミーナ監督にとって二度と戻らない懐かしい記憶に他ならない。蝋燭や暖炉にゆっくりと火を灯し、温もりと笑顔に満ちたあの頃のひとときを蘇らせる魔法のような試みが、そこには存在する。

『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』© 2024 Millers Point Film LLC. All rights reserved.
出演者はまるでウェス・アンダーソン作品やロバート・アルトマン作品を思わせるほど、とにかく大人数。その中にはプロの俳優(マイケル・セラやエルシー・フィッシャーら。その他、マーティン・スコセッシの娘フランチェスカやスティーヴン・スピルバーグの息子ソーヤーも出演している)もいれば、全くの演技未経験者もいる。
これら様々なタイプの出演者を織り交ぜることで、化学反応のグラデーションを生み出し、なおかつパーティーの佳境では一家の記録ビデオを通じて、過去と現在とが幻想的に融合していく様をひしひしと感じることもできる。
ただし、だからと言ってそれが伏線となって更なる何かを引き起こすことはない。それらは瞬間として紡がれるのみ。「クリスマスも家族も友人も思い出も、ただただそこにある」というのがこの映画の美学であり、スタンスでもあるのだろう。