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『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』終焉から見えてくる“いまこの瞬間”の輝きを抱きしめる

© 2024 Millers Point Film LLC. All rights reserved.

『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』終焉から見えてくる“いまこの瞬間”の輝きを抱きしめる

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終わりの予感がもたらすもの



 タオルミーナ監督はこれまでにも、ストーリー重視ではない、ちょっと変わった作品を手掛けてきた。初長編作『ハム・オン・ライ』(19)は、年頃の青少年たちが地元のデリで通過儀礼を経ることによって、ある者はこの地から消え去り、またある者はずっとこの地に留まことを余儀なくされる。そんな不可思議な運命の線引きが行われる様子を、ミステリアスでノスタルジックな空気感で描き出した一作だ。これは筆者の推測だが、おそらく事態の原因や真相には大した意味はなく、むしろ若者と地元との極めて微妙な関係性を一つの現象として表現することに狙いを定めた映画なのだろう。


 続く『ハッパーズ・コメット』(22)は、まさにコロナ禍の人と人とが相見えることのない時期に撮影された作品で、セリフが全くなく、夜のしじまに響き渡る自然音と、そこにうごめく孤独な人々の姿が詩的に紡がれた特殊な映画だ。


 前2作に比べると、今回の3作目『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』はプロジェクトの規模が格段に増し、しかも世界中の観客が理解可能な伝統文化を描いていることもあり、タオルミーナにとっても今後更なる大きな領域へと踏み出すための試金石だったことが窺える。



『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』© 2024 Millers Point Film LLC. All rights reserved.


 それに加えて、筆者が関心を覚えたのは、監督自身が「アメリカ人の多くが『終わりの予感』を抱いている」(プレス資料より)と語っていることだ。


 本作で描かれるような大家族の細分化、それによる休暇の過ごし方の変化だけではない。気候変動や「MAGA」時代に伴う喪失感に至るまで、今まさに変わりゆくもの、終わりゆくものは数限りなく存在し、おそらく2024年に本作がカンヌでお披露目されて以降、その勢いはさらに度合いを強めているに違いない。


 もちろん、オムネス・フィルムズの作品群は何かを声高に批判したり、揶揄したりはしない。「そこにある時間や空間」を尊び、提示する。ただそれだけ。


 しかし何かしらの終焉を見つめることは、同時に、私たちが当たり前だと思って生きるこの瞬間や文化や価値観に光を注ぎ、その尊さを抱きしめることを意味する。もしかするとオムネス・フィルムズが注目を集める最大の理由は、劇的に変わりゆく現代社会で、こういった”きっかけ”をもたらすユニークな視点と構造にあるのかも。だとすればこれから先、彼らの存在意義はますます大きなものになっていきそうだ。



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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作品情報を見る



『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』

Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー中

提供:JAIHO 配給:グッチーズ・フリースクール

© 2024 Millers Point Film LLC. All rights reserved.

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