2025.10.02
思春期には、周囲や自分自身に対する強烈な違和感がつきものだ。いつも誰かの目を気にして、疎外感が募り、自分は理解されていない、居場所はここではないと、ぐるぐると意識を徘徊させては、見つからない出口にたびたび絶望する。そんな牢獄のような日々の中で、ふと光り輝く尊い存在を見出した時の安心感や救済感は計り知れない。
A24製作の映画『テレビの中に入りたい』(24)から自ずと受け取ったのも、そんな少年時代の自分と再会したかのような、こそばゆさ、気恥ずかしさ、不可思議さ、生々しさだった。
『テレビの中に入りたい』© 2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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内気な少年と奇妙なテレビ番組との遭遇
物語の舞台は90年代のアメリカ郊外。主人公オーウェンは、いつも不安そうな表情を浮かべている少年だ。彼には唯一気になっているものがある。それは毎週土曜日の22時半から放送されているティーン向けドラマ「ピンク・オペーク」。どうしても観たいけれど、就寝時間の後なので、親が視聴を許してくれない。
ある日、彼は2学年上のマディと知り合う。彼女は「ピンク・オペーク」の熱烈なファンらしく、公式ガイド本を抱き抱えるように読み、この番組について喋り出すともう止まらなくなる。「ドラマを観るのを親が許してくれないんだ」「それならウチに来れば観られるよ」。そんな会話を交わした週末、親に「友達の家に泊まる」と嘘をついてやってきたマディの家。
そこでリアルタイムで初めて観た同番組。オーウェンは一瞬にしてその奇妙で、不可思議で、なぜか居心地の良い物語世界の虜になりーーー。